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旅の仲間

「よし、行くか」 「ん」 「おい」 山に囲まれたラナの街の朝晩は冷える。しかし昼に近づくにつれ気温は上がりポカポカとした陽射しが降り注ぐ。絶好の旅日和である。 「あの鳥が飛んでる方に行ってみたい」 「今回は鳥が飛ぶ方角か」 「おい」 空には白く大きな鳥が10羽程の群れで飛んでいた。首の長い綺麗な鳥であった。 「宿のおっちゃんが、弁当作ってくれた」 「お!有難いなそれは!」 「おいこら話を聞けーーー!!!」 先程から声を掛け続けていたが一向に返事が返って来ないことに痺れを切らしたレジナルドは声を荒らげた。数歩前方を歩いていた二人は突然の大声によくやく足を止め振り返る。 「どうしたレジナルド」 「・・・うるさ」 不思議そうな顔のダグと、耳に指を入れ鬱陶しそうに顔を歪めるルーファス。二人の様子に、一人まだ状況を掴めていないレジナルドは苛立ちを隠そうともしない。 「どうしたじゃないだろ!なんで二人がいるんだ!?」 久々のベッドで眠ったことによりいつもより少し寝坊気味に目を覚ましたレジナルドは、昼前には宿を出て旅立つ準備をしていた。そしていざ旅を再開しようとラナの門を出た所でこの二人、ダグとルーファスが待ち構えていたのだ。 そしてあれよあれよという間に二人のペースにのせられて今に至る。 「なんでってお前・・・、昨日言っただろ?」 「は?」 昨日?昨日何を言われたというのか。ダグに言われ昨日の会話を思い起こしてみるが、思い当たる会話は見つからない。 訳が分からず混乱した様子のレジナルドをにこにこと笑顔で見つめるダグ。そして興味がないのか道に咲いている花の香りをくんくんと嗅いでいるルーファス。 「昨日言っただろ。お前の望みが叶うぞって」 「!あぁ、その事について聞きたかったんだ、一体俺の望みって・・・」 確かにその言葉には覚えがあった。しかしそれと二人と共に旅をすることの答えになるのだろうか。 「旅の連れが欲しいんだろ?」 「え、それって・・・」 「俺達がその連れだ」 予想していなかった事態にレジナルドは言葉を失った。確かに一人旅に飽き、旅を共にする仲間が欲しいなんてことを思っていたのも確かだ。 「話し相手が出来て嬉しいだろ?」 「え、いや、確かにそれは嬉しいが、」 しかし、ゴールがどこかもわからない旅に、この二人はそんな気軽について行くというのか?ちょっと隣の街へ、といった気軽な旅ではない。何ヶ月、もしかすると何年もかかるかもしれない。目指す場所もわからないため、国境をいくつも越えることになるかもしれない。レジナルドがしている旅はそんな旅なのだ。 「この旅はいつ終わるかもわからないんだぞ?獣人達が生きているかも確かではないのに・・・」 「生きてる」 「!」 先程まで興味無さそうに道端の花を覗き込んでいたルーファスが、いつの間にかこちらを真っ直ぐに見つめながら言い放った一言に、レジナルドは言葉を失った。 これまで、旅をしている中で獣人の里の情報が手に入らなかっただけでなく、誰もが獣人達がまだ生きているとは信じていなかった。なので、自分と同じく、獣人が生きている、そう言い切ったルーファスの言葉にレジナルドは驚きが隠せなかった。 「獣人の里はある」 「そう思うか!?」 「思う」 確かめるように聞いたレジナルドの言葉にも、ルーファスは迷う素振り一つ見せず力強く頷いた。その言葉だけで、何の手がかりもなく旅をしていたレジナルドにとっては嬉しい出来事であった。しかし、なぜルーファスは獣人の里があるとまで言い切ることが出来るのか。 「もしかして、場所を知っているのか!?」 「それは知らない」 一縷の望みは一瞬で砕け散った。そこまで上手い話ではないようだ。 「でも俺の感は当たるから大丈夫。俺達と一緒にいれば、いつか里にたどり着く」 「・・・感」 仲間が出来た嬉しさはあるが、感ということには少し不安を感じた。何よりレジナルドはルーファスという男について、ダグの連れだということしか知らない。 白い髪と赤い瞳、透き通る白い肌にやたらと顔の整ったルーファスには、その見た目以上に何とは言い難い不思議な雰囲気がある。それがどんなものかと聞かれると説明するのは難しいのだが、何か引き寄せられるような、そんな感覚があるのだ。 真っ直ぐにその赤い眼に見つめられると、つい言うことを聞いてしまいたくなる、そんな不思議な気持ち。 (なんと言うか、妙な色気があるんだよな・・・) 「ま、これからは三人で仲良くやろうじゃないか」 「ん」 そう言い手を差し出してくる二人。その手をレジナルドは迷わずに掴んだ。 「あぁ、よろしく頼むよ」

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