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ノエルという男
「っん、」
「「!!」」
ノエルからルゥの怪我の現状を聞いている最中に、ルゥが小さく身動きをとった。それに素早く反応したダグとレジがベッドに縋り付くように近付く。
「・・・寝起き一番が、男のドアップはキツいって・・・」
「ルゥ!目が覚めて良かった・・・っ!」
「無茶しやがって、本当にっ」
いつもは男らしく力強い印象の男達が心底情けない顔でこちらを見下ろしている。どうやら相当の心配をかけたようだ。ルゥは悪い事をしたなとまだぼんやりとした頭で思った。
にしても、
「っ、身体中痛てぇ・・・」
「当たり前だ」
「ノエル・・・」
そこでようやくルゥはダグ達の背後に仁王立ちしたノエルの存在に気付いた。
「何年も顔を出さなかったと思ったら急に現れやがって。しかもなんだ?元気な姿を見せるならまだしも崖から降ってくるって?お前は俺に身投げを見せに来たのか??」
「身投げって」
まあ、状況的にはそうなんだけど・・・と、ルゥは思ったが流石にそれを口に出す勇気は無かった。ルゥとダグがこの谷でノエルと暮らしていたのは10年前の話。その後二人は旅に出た。
旅を始めた最初の頃はこの家を拠点に動いていたこともあり、年に一回はノエルと会っていたが、徐々に行動範囲が広くなりその頻度は減っていた。結果、三人が顔を合わせたのは実に5年ぶりである。
「ったく、何考えてんだお前らは・・・」
「悪かったって」
「いや、今回のことは流石に俺も肝が冷えた」
万全での状態での再会とはならなかったが、久々の再会に三人は喜んでいた。ルゥがこの状態で無ければノエルはもっと素直な喜べたのにと思ったが、それでも嬉しいものは嬉しい。
「で、さっきからそこで俺をガン見してる犬っころはなんだ?」
「え!、あ、いやっ、」
ルゥが目を覚ました事に一安心したレジは、三人の久々の再会を黙って見守っていた。というのも、先程までは余裕が無かったため気にならなかったが、今になって自分の目の前に伝説とされる龍人がいることに緊張していたのだ。
龍人、ノエル。その姿は確かにこれといって人と違う特徴は無く、普通の人間だった。身長はレジよりおおきく2mはありそうだが、ダグのように筋肉隆々といった感じではない。特徴的なのは腰まである長い銀色の髪と宝石のような紫の瞳の色。幼さがほんのり残るルゥとは違い完成された大人の色気漂う美丈夫であった。
そして、
「180歳だって聞いていたから、てっきり俺はご老人を想像してて・・・」
「180!?失礼な!俺はまだ165歳だ!!」
レジの言葉にノエルは心外だ!とばかりに目をむく。180歳という誤情報を伝えたルゥとダグはそうだっけ?と軽く頭を傾げる程度だったが、本人には大切な事実らしい。
とは言っても、165歳のノエルの見た目は高く見積もっても30歳くらいにしか見えなかった。なんならダグと比べどちらが歳上かと聞かれたら迷うくらいに、その見た目は若い。
「龍人は長生きだが、年齢のままに歳をとるわけではない」
「・・・そのようですね」
目の前にいるノエルの年齢に間違いがないとすれば、そういうことなのだろうとレジは納得した。
「で、お前らは何の用で来たんだ?ただ俺に会いに来たわけじゃないんだろう」
5年も音沙汰が無かったお前達が何を企んでいるんだと、ノエルは舌打ちをしながら言う。どうやらダグとルゥの二人がずっと姿を見せなかったことを根に持っているようだ。
「実は、俺は獣人を探す旅をしていて、獣人について教えて欲しくて二人にここに連れてきてもらったんだ」
ダグが口を開こうとするより先にレジがノエルに理由を伝えた。すると、ノエルはおかしなものを見るような目でレジを見下ろす。
「龍人についてならともかく、獣人について、俺に聞きにきただぁ?それなら俺より本人達に・・・」
「ノ、ノエル!」
まだ話している最中のノエルの言葉をダグが無理やり遮った。その慌てた様子にますますノエルはおかしなものを見るような目をし、そして状況を悟った。
「お前ら、こいつに正体隠してるのか?何のために。それにこいつも半端な匂いだが、お前らの仲間だろう」
ノエルの言葉にしまった!という顔をするダグと、何を言われているのか理解出来ていない様子のレジ。ルゥは目を瞑って何かを考えているようだった。
「え、こいつらの正体って・・・、ダグとルゥの正体、か?それに俺も?」
三者三葉の反応をされ、レジはただただ戸惑った。
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