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聞かされる事実2

「・・・怒らない?」 「怒るような内容なのか」 「ルゥ」 なかなか話したがらないルゥをダグが窘める。こういう時だけ子供らしさを出してくるルゥに、レジはつい笑ってしまった。 自分のことを命がけで助けてくれたこの子供のことを、本気で怒れる日なんて来ないだろうな、と。 レジが笑っていることに気付き、どうにか話す決意が決まったのか、ルゥは先程までの幼い表情を引っ込め、話し始めた。 「ふぅ・・・、もう何から話せばいいかわからないから、後から纏めて質問して」 「わかった」 レジの返事を聞き、ルゥは一度ダグを見る。ダグはそれに頷きで返した。 「レジ、俺とダグはあんたが探している獣人だ」 「はぁ!?ちょっと待て・・・」 「質問はあとで」 「っ、わかった」 衝撃的なカミングアウトにレジが口を開いたが、ルゥの赤い眼に黙るように、と言われ口を閉じる。何故かルゥの言葉に従わなくてはいけないと感じた。 「そしてレジ、あんたも獣人だよ」 「!?」 「ま、獣人って言っても多分ハーフ。獣人と人間の子だ」 「獣人の、ハーフ・・・」 ルゥとダグが獣人だと言うことには驚いたが、それに続いて自分までもが獣人の、しかもハーフだと言う。 しかし、獣人と人間の間に子供が産まれることはあるのだろうか?ここに辿り着くまでに聞いた話では、獣人は人と距離を置いているはずなのだ。 「獣人と人間のハーフなんて、滅多にいない。夫婦になっても二人の間には、同じ時間が流れてはくれないから」 そう、寿命の違いすぎる二人が一緒にいることは、とても難しいのだ。 「これは俺の予想だけど、レジが小さい頃には両親は亡くなっていたんだろ?」 「ああ」 「多分、レジの父親、もしかしたら母親かもしれないけど、獣人だった親は、寿命が近かったんだと思う」 それはあくまでルゥの予想らしいが、レジの獣人の方の親は、既に寿命が残り僅かだったのではないか、と。だからこそ人間であるパートナーと残りの人生を共にする選択をすることが出来たのではないか、と。それでもやはり、かなり稀なケースではあるらしい。 「・・・もしかすると、二人の間にレジが産まれたのは予想外の出来事だったのかもしれない。無理な話ではないけど、種族が違う分ハーフの子供は出来にくいから」 「予想外・・・」 予想外。その言葉に少し、レジの心が傷んだ。しかしそれに気付いたルゥが慌てたように言葉を続ける。 「レジ、今のはレジのことを否定する言葉じゃない。俺達獣人は自らが望まない行動はしない。だから、レジが望まれて産まれてきたのは間違いない」 ただ、幼いレジを残して死んでしまったことは、彼らにとってきっと望んだことではないだろう。愛する人との間に奇跡的にできた我が子を残して先にこの世を去ることは、長命だからこそ失う辛さを知る獣人にとって、何よりも辛いことだ。 「それによレジ、“レジナルド”っていうお前の名前は俺達の世界じゃ親にもらうには最高の名前だぞ」 「名前がか?普通の名前だと思うが」 ダグの言葉にルゥも同意するように優しい笑顔を見せた。 「獣人達の中にも神話のような語り継がれる話があってな、その中に“レジナルド”って名前がある」 「“溢れる愛情”。照れくさい程ストレートな親の愛を込められた名前だな」 “溢れる愛情”、その意味を知った上でその名前を付けたというなら、確かに照れくさいものがあった。そして同時にほとんど記憶にもない両親が、どういった人であったのか強く知りたいと思った。 「ルーファス、まだ話すことがあるだろう」 「わかってるよ」 どうやら話はまだ続きがあるらしく、改めてレジはルゥへと向き直った。 それは先程ルゥが言っていた、“目覚める”ということについてと、目覚めた者に与えられる“運命”についてだった。 「さっき俺達が言っていた目覚めるとは、獣人としての本来の力に目覚める、ということだ」 本来なら産まれてまもなく成長の過程で目覚めるもので、簡単に言えば“先祖の力を借りる力“だという。 「獣人の驚異的身体能力は、それぞれが受け継いだ先祖、つまりは動物の力を引き出すことで通常の何倍ものものになる」 足の速い動物の力を受け継げば異常な程に速く走れるし、力が強い動物なら驚異の破壊力を得られる。 そして、その動物達の力を借りることも出来る。 「多分、この力には目覚めるんじゃないか?」 「?」 「狼から“嵐がくる”ことを教えて貰っていただろ」 「!!あの時の声か!!」 嵐が来る前に聞いた、狼の遠吠えと同時にレジの頭の中に響いてきた声。それは正しく狼自身の声だったのだ。 「レジは狼の獣人ってことだ」

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