15 / 90

聞かされる事実3

「ちなみに俺は虎で、ダグは熊の獣人」 「ダグが熊ってのは、なんとなく分かる」 「見たまんまだからな」 うるせぇとぼやくダグ。本人も自覚があるのだろう。ノエルが馬鹿にするようにクツクツと笑っている。 龍人にもそういった特徴があるのだろうかと、ふと思ったが今質問してはまたルゥに怒られてしまうので口には出さなかった。 「このままなら先祖の力に目覚めるのも時間の問題だと思う。目覚めたらーーー、 もう王の命令に背くことは出来ない」 獣人は自由な生き物だ。自らの本能に従い、自らが望まないことはしない。 しかし、王の命令となれば話は変わってくる。 王は獣人達にとって居場所であり、安らぎであり、心の拠り所だ。そして同時に、絶対的な獣人達の主でもあった。 王が望むことは獣人達全ての望みであり、王の命令は命に変えても破らない。強要される訳では無く、本能がそれを望むのだ。 「俺は獣人に王なんて要らないと思う」 「ルゥ!俺達には王が必要だ!!」 「王が居なくても獣人は生きていける。自分が望むままに生きれるし、居場所だって自分で見つけられる」 王がいるから獣人には心に枷がかかっている。そう言ったルゥの表情は、何処か悲しく、苦しそうであった。 その表情を見るのはとても辛く、悲しかった。 「レジ、レジが人間の家族の元に居場所を見つけれなかったのは俺のせいだ」 「ルゥの?」 「俺が生まれたからレジの居場所が家族の元から移ってしまった・・・ ーーー俺が獣人の王だから」 「!!」 その言葉を聞いた瞬間、レジの中で何かが弾けた。そしてなだれ込むように“王への想い”が胸の内から溢れてきた。 “会えて嬉しい” “生まれてきてくれてありがとう” “幸せだ” “王の為に生きたい” “ずっとそばに居たい” 次々と溢れてくる感情に、いつの間にかレジの目からは涙が零れていた。胸に込み上げる温かい気持ち。それはあまりにも優しく、幸せに満ちた想いであった。 (そうか、俺の居場所はここにあったのか) 「ルゥ、俺はお前に会えて嬉しい」 「レジ・・・」 涙を流して喜ぶレジに、ルゥはやはり辛そうな顔をするのだった。 パンっパンっ 「一旦話は終わりだ。怪我人は寝ろ」 ずっと静かに見守っていたノエルが手を叩き、話は終わりだと起き上がっていたルゥを無理やり布団へと戻す。 そして意識が戻ったルゥを改めて診察するからと言い、ダグとレジの二人を部屋から追い出した。 「飯の用意でもしとけ」 そう言うと部屋に鍵をかけてしまった。 口を挟む間もなく一方的に追い出されてしまった二人は、お互いに顔を見合わせる。先程までしていた会話から一変、急に飯の用意と言われてもそんなすぐに切り代われるものでは無い。 しかしこのままここに突っ立っていても仕方がないのは事実。 「・・・とりあえず、飯の準備するか」 「お、おう」 家の中をある程度把握しているらしいダグに続きレジもキッチンへと進む。ダグは適当に扉や床下の貯蔵庫から食材を出していく。一人暮らしにしては食材のストックが多いのは、この周辺には街や集落が少ないからだろう。 レジは手馴れた様子でキッチンを漁るダグを静かに観察していた。出会ってまだそこまでの付き合いではないが、その正体がまさか獣人だったとは。そして、自分は獣人のハーフであり、ルゥに至ってはまさかの獣人の王・・・。流石に情報過多である。 「何か聞きたいことがあったら聞いていいぜ」 手は動かしながらじゃないと後からノエルに叱られるがな、と言って取り出したじゃがいもとナイフをレジに渡す。何を作る気かはわからないが、とりあえずレジはそのじゃがいもの皮を剥くことした。 「俺達が獣人と聞いて驚いたか」 「そりゃ驚くだろ・・・でも、言われて納得したのもある」 獣人はいると言い切ったり、世間に知られていない寿命のことや、龍人の知り合いがいることなど、普通の人間ならおかしなこともダグ達が獣人であるなら納得する。 「それにお前ら、狩りに行くたびに大量に獲物を捕まえてただろ」 「得意分野だからな」 「いくら得意でも人間なら素手で狩りはしない」 初めは何か即席の道具でも使って獲物を捕っているのかと思っていたが、そうではなかった。ダグとルゥの二人はいつも素手で狩りをしていたのだ。ふらっと手ぶらで森に入り、短時間で大量の獲物を捕って帰ってくる。どう考えても普通の人間が為せる技では無いのだ。 「お前だって力の使い方覚えりゃ出来るぞ」 「そう・・・俺にもその力があるんだよな」 産まれた時から力に目覚めコントロールを学んでいく獣人にとって、ずば抜けた身体能力は当たり前の力であった。しかし、今の今まで自らに獣人の血が流れていることも、その力の存在も知らなかったレジにとってはイマイチそれがどういうものなのかわからない。

ともだちにシェアしよう!