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もう一つの目的

「そういやレジ、旅の目的である自分の居場所について、一応解決したと思うんだがこれからどうすんだ?」 飯が出来たとダグに呼ばれ、今は四人で食卓を囲んでいる。怪我人だというのに起き上がって普通に食事をしているルゥは、流石獣人というか、かなり丈夫にできているらしい。 「おいおい、ここで急に俺を放り出すつもりか」 「いやそんなつもりはないが、目的は果たされたわけだろ?」 レジの旅の目的は獣人の力に目覚めたことで達成したと言ってもいいだろう。それならば、ここからのレジの行動は自由なのである。 結果的に育ての親に対して真の居場所というものは感じられないかもしれないが、それでも今まであった漠然とした違和感の正体は掴めたのだ。そして家族は家族でありその事実が変わることはないと、レジは言っていた。それならば家族の元へ帰るのだろうか。 「忘れちゃいないか?俺の旅の目的はもう一つあっただろう」 「獣人の里に行くことか」 「そうだ」 そう、レジの旅にはもう一つ目的があった。獣人の里へ行くこと。憧れの獣人は、まさか自分もその仲間であったわけだが、獣人の里へ行ってみたいという想いは変わっていなかった。 「ルゥと一緒にいれば獣人の里に辿り着くって言ったのはルゥ本人だぞ」 責任持って獣人の里まで連れて行け。そう何故か偉そうに言うレジに、ルゥはスープを口に運びながら困った顔をする。 獣人の里に辿り着くとは確かに言った。しかしそれは、正確に言うと旅をしている間に里となる場所を見つけてそこに里を作ってみせるということだった。レジが力に目覚めてルゥを王だと認識するまでに、それをやってしまおうと思っていたのだ。 しかし予定よりもかなり早く力に目覚めただけでなく、ルゥ達の正体も知られた。そうなればもう隠す必要はない。 「連れて行こうにも、今この世界に獣人の里は存在しない」 「なに!?」 「絶賛里になる土地探し中だ」 開き直ったルゥはおすすめの土地募集中!と逆に里の場所を求めた。 「土地募集って言われてもな・・・、やっぱ人が住む街からは離れてた方がいいのか?」 「いや、俺は獣人はもっと他種族と関わるべきだと思っている」 獣人と人間との寿命という壁は無くなる訳では無いが、それでもうまい付き合い方はあるはずだ。流石にいきなり同じ街に住もうとは言わないが、何かしら交流を持つことが悪い事だとは思わない。違う種族との関わりは、獣人にとっても、そして人間にとっても新しい発見があるのでは無いだろうか。 「まあ、正体を隠してなら人里に紛れるのは簡単だがな」 一人ワインを飲みながら食事をとっていたノエルがグラスを傾けながら言う。そう言うノエル自身、定期的に人里に行っては診療や薬を売ったりしている。 「見た目が歳をとらないせいで同じ街に長居は出来ないのが問題だな」 「正体を隠すつもりはない。獣人が獣人であることは、隠さないといけないことじゃない」 「そうだな」 しかし滅びたとされている獣人が急に姿を現せば、騒ぎになるのは間違いない。その事を上手い具合に人間達に周知しつつ、適度な距離感を保てる土地を手に入れる。それが新たな獣人の里を作るにあたってルゥが求めている条件だ。 「もうこの谷に里作っちまうのはどうだ」 「ふざけるな」 考えることが苦手なダグが出した提案は瞬時にノエルに却下される。この辺りは人間がなかなか簡単に行き来できる場所ではない為、里を作っても人間達に知られることは考えにくい。しかし、ここは長年ノエルが住み続けていた場所であり、その環境を自分達の勝手で作り替えてしまうことは避けたかった。 とりあえずこの話はルゥの怪我が治り動けるようになるまでは、どちらにしろ進めることが出来ないため保留となった。 「お前らが昔使ってた部屋にベッドがあるからそれを使え」 「ノエルはどうすんだ?」 「俺はルーファスと寝る」 「「え!?」」 一人で暮らすには広いノエルの家は、ルゥやダグが昔使っていた部屋がそのまま残されていた。定期的に掃除などをしていたらしく、それがいつ二人が訪れてもいいようにというノエルの気遣いだと思うと、5年も音信不通だった事が申し訳ない。 そしてその部屋をそれぞれダグとレジに使うように指示したノエルは、まさかのルゥと一緒に寝るという。 「いや、家の持ち主にそんな窮屈なおもいをさせるわけにはいかない!」 「それにルゥは怪我人だし、なんなら俺がルゥと寝るぞ」 自分達が伸び伸びと一人一つのベッドで寝るのに家人と怪我人が二人で寝るというのはどうにもおかしい。しかし、 「俺のベッドが一番デカいから窮屈なことはない。お前らみたいなごつい奴と寝かせる方が逆に心配だ」 どうしてもいうならお前らが一緒に寝てベッドを一つ寄越せ。そう言われてしまえば二人は言い返すことが出来ない。 「俺はなんでもいいよ。昔はよく一緒に寝ていたし」 「そん時はお前さんも小さかったからだろう・・・」

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