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王都ランドニア

順調に旅は進み王都ランドニアまで、もう目と鼻の先であった。 「明日には着けるんじゃないか?」 「そうだな」 「ふぅ〜きっかり二週間だな」 谷を出発して明日で二週間。当初は無茶な日程かと思っていたが、獣人と龍人の足とは予想以上に疲れ知らずであった。 寒さで若干動きは鈍くなっていたルゥだが、発情期を機に多少寒さへの耐性が上がった。多少だが。そのため昼間は小鳥を追いかけたり、野うさぎを捕まえたりと楽しそうに旅をしていた。夜の寒さには耐えれないらしく2日に1回は街に泊まり、野宿の際はこれまで通りレジを湯たんぽに眠っている。 「明日王都に着いたらそのまま王城へ向かおうと思う」 「直接行って追い返されやしないか?」 「それは大丈夫だ」 明日は予定では昼過ぎには王都へ到着する見込みである。レジはそのまま王城へ向かい、王への謁見までしてしまおうと言うのだ。 「前から不思議だったが、レジナルド、お前は何故王に顔がきくんだ」 「別に顔がきくってわけじゃないんだが、俺が元々いた軍ってのが王直属の王国騎士団だったんだ」 「へぇー!エリートだったのか!」 実はレジが所属していたという軍はランドール王国騎士団であったのだ。しかも所属は王直属の近衛兵団だという。そのため国王とも面識があるのだと。その話を聞くとレジが王に会おうと言い出したことも、王に会う手段があるということも納得が出来た。 「凄いなレジ、知り合いに王が二人もいるのか」 「俺は別に王って言っても名前ばかりの存在だけどな」 「んなわけねぇだろうよ」 一緒にしたら怒られるというルゥにダグがとんでもないと否定する。確かに国民の数も国土の広さも比べれるものでは無いが、ダグ達にとってルゥ以上の王など存在しないのだから。 ルゥはほんの軽い気持ちで言ったのだが、大袈裟な程否定してくるダグに対して少し悪いことをしたと思った。別に自分の存在を軽視しているつもりはないのだ。自分が王であるという事実は変わらないし、自分に対する獣人達の想いも旅をしていく中で何度も見てきた。 今まで通ってきた街とは明らかに違う立派な門を潜ると、そこは活気と人に満ち溢れていた。 「相変わらず王都は凄い賑わいだなぁ」 「なんだ、王都には来たことがあるのか」 「まあな。最後に来たのは3年前だが、その前は終戦直後だったからこんなに賑わってはいなかったな」 「終戦直後・・・」 ダグは見た目ではレジの少し上にしか見えないが、実際は今年で80歳になるという。その為70年前に戦争が終わった時の事も、それより前の事も知っているのだ。 「俺は当時はまだ子供だったから戦争には出てないが、先王がランドールについたからな。俺の一族は元々王の世話係を代々担っていたから、俺もここにいたんだ」 自ら先頭に立って戦いを仕切っていた先王についてダグの一族の大人達も戦争に参加していたという。戦争で数えきれない程多くの人間が命を落としたが、それは獣人達にも言えることであった。 当初ランドールに加勢し戦いに参加した獣人の数は100人程。どんなに身体能力が飛び抜けているとはいえ、国を相手に100人は少な過ぎる。それでも拮抗していた力は大いにランドールに傾き、見事に数十年続いた戦争に終止符を打つことにはなったのだが、それに対する代償も大きかったのだ。 「ま、どの国にも属さない獣人がなんでランドールに加担したのかは先王しか理由を知らないんだが、結果平和な時代が来たんだから頑張った甲斐が有るよな」 「そうだな・・・」 何故当時の獣人の王がランドールについたのか、その理由は先王しか知らない。理由を知らなくとも王がそうすると言えば獣人達はついて行くからだ。 「ダグ!レジナルド!ちんたらしているとルーファスを見失うぞ!!」 「おっと、この人混みではぐれたら探すのは大変だぞ」 「行こう」 マイペースなルゥがふらふらと街中を歩けばすぐにどこかへ行ってしまう。気配で何となくの居場所はわかるとはいえ、人に溢れた王都で落ち合うのはなかなかの至難の業だ。 ダグとレジは先を行くルゥとノエルを追うべく足を早めた。 少し先の建物の脇に二人の姿を見つけた。しかし二人の傍には更に三人の男がいた。 「お久しぶりです王!」 「お元気そうでなによりです!!」 「更に立派になられて!」 「ん、みんなも元気そう」 パッと見はがたいのいい大男に囲まれているような光景であるが、どの男達も嬉しそうにルゥに代わる代わる抱きつき挨拶をかわす。実際に見えているわけではないが、全力で尻尾を振る幻覚が見えそうな勢いである。 「なんだあれは」 「ありゃ仲間探しを頼んでいる若い奴らだ」 おーい!と男達に向かってダグが手を振ると、男たちもまたそれに反応する。 「ダグも久しぶりだな!」 「くぅーっ相変わらず王と一緒に旅してるなんて羨ましいっ」 「俺たちかなり仲間集めたんですよ!」 年齢としてはルゥより歳上に見えるが、みんな子供のように褒めて褒めて!とルゥに集まる。ルゥは群がる男たちがルゥに抱き着いたり擦り寄るのを、特に何をするわけでもなく好きにさせている。 それを見ていたレジはなんだか面白くない気持ちで胸がもやもやとした。 (ベタベタと触るんじゃないっ)

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