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城へ

三人の獣人は当分の間ランドールにいるとのことで、また会う約束をして別れた。 「?なんでレジは怒ってるんだ」 「怒っていない」 何故かムッとした顔で傍に張り付いているレジをルゥは不思議そうに見上げる。怒っていないというが顔には眉間に皺が入っているし、口元もムッと力が入っている。別に今はちゃんとみんなの傍に居るというのに、迷子防止だと言ってピッタリと横から離れない。 意味がわからない。 ぐいっ 「!?な、なんだルゥ・・・」 ルゥはレジの顎を掴んだ。ぐっと頬が寄せられ口がくちばしのように尖る。 「怒ってないなら、その変な顔を止めろ」 「!・・・悪い」 眉間から力が抜けたのを確認してルゥは手を離した。何があったかは知らないが、話す気がないならそんな顔で自分の横に立つな。 「ルーファス許してやれ。そいつは知らない奴がお前と仲良くしているのを見て拗ねてるだけだ」 「なっ!!」 「ははっ!なんだレジ、お前仲間外れで拗ねてたのか!!」 「ちがっ・・・」 にやにやしながらノエルが言えば、ダグまでのってきた。拗ねている・・・、あながち間違いではないが面と向かって言われると恥ずかしいものである。慌てるレジの姿に歳上二人はにやにやが止まらない。 レジのルゥへの気持ちに気づいているノエルと、単に可愛いなぁと思っているダグ。どちらにしろレジには恥ずかしくて仕方ない。 三人のやり取りを見てルゥは、なんだそんなことだったのかと納得した。 「別にレジも仲間なんだ、拗ねる必要はないだろ」 「そう、だよなぁ・・・ははっ」 拗ねていたというより実際はルゥにベタベタと触っていたことに対する嫉妬だったのだが、流石にそれを言うことは出来なかった。 ルゥはスキンシップを嫌がらない。それは普段からスキンシップの激しいダグと常に一緒にいたからだろうが、どうせならその権利は自分だけに欲しい。 (って、流石にそれは自分勝手過ぎるだろ) レジは自分がそんなことを考えていることに心の中でため息をついた。案外自分は嫉妬深い質であるらしい、と。 四人は予定通り王城へと向かった。 「おかえりなさい!」 「どうぞお入りください!!」 聞いていた通りレジは顔がきくらしく、門番には止められる所か笑顔で迎え入れられた。門の外からも見えていた王城は石造りで重厚感があり、しかし白をメインに細かい細工が端々まで施されていて美しい。 「ルゥ、後で植物園へ連れてってやるよ」 「ん」 手入れされた花壇を覗き込むルゥにレジが笑いかける。入口辺りだけでもかなり綺麗に手入れされた植物が広がっているが、奥には更に広い庭園があるというのだから驚く。 しかしそれ以上に驚いたことに、城内にいる明らかに身なりの整った位の高そうなもの達が、レジを見つける度に足を止め挨拶をするのだ。 「・・・もしかしてレジって実は凄いやつなのか?」 「ただの軍人ではないだろうな」 「??」 旅の最中とは違い先頭を歩くレジの後ろ姿にダグとノエルが小声で囁き合う。いくら顔がきくとはいえ、ここまで自由に城内を歩き回ることも普通の軍人では出来ないだろう。そのことがいまいち分かっていないルゥは、見慣れない城内の装飾品を眺めるのに夢中である。 「レジ!」 「よぉランス!元気そうだな」 軍服に身を包み腰に剣を下げた金髪の男がレジへと駆け寄ってきた。歳としてはレジと同じくらいに見えるが、キリリとした顔のパーツと姿勢の良さが印象的な男である。しかしその男の表情は今、怒りが全面に押し出されていた。 「元気そうだな・・・じゃないだろ!急に軍を任せて旅に出たと思ったら三ヶ月以上も音沙汰無しだぞ!?」 「まあまあ・・・」 「せめてナラマ様には手紙の一つでも出すべきではないか!?一度も届いていないと仰っていたぞ!」 「いやぁー、手紙って苦手なんだよな。ほら、報告書もお前に代筆頼んでいただろ?」 何やら凄い勢いでレジに絡む男。しかしレジの対応は至って普通であり、普段通り。二人の温度差を感じる。自分の怒りが全くレジに届いていないことに頭を抱え今にも叫び出しそうな男は、見ていて少し可哀想になってくる。 口を挟むと男の怒りが飛び火してきそうなので、ダグ達は状況を見守ることにした。 (なんでもいいけど、腹減った・・・) ルゥに至っては目の前のやり取りよりも昼時を過ぎた事による己の空腹についてで頭がいっぱいであった。

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