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とりあえず、食事にしないか?
「ルゥ!それに・・・殿下!!」
「久しぶりだねレジナルド」
ルゥが居なくなったことに気づいたレジ達が噴水までやってきた。そう離れていなかったためすぐに見つけたが、その隣にいる人物にレジは驚きの声を上げる。
「お久しぶりです。それにしても何故殿下とルゥが一緒に・・・」
「ああ、可愛い子がいるからついナンパしてしまったよ」
ナンパをされた覚えはないが特に否定はしない。それにしても、ランドール王国という大国を纏めるトップということで、勝手に厳格な風格の国王をイメージしていたが、どうにも実際は違うらしい。
レジや後を追ってきたランスとも先程と同じくにこにことした表情で会話するナラマ王は、どこまでも穏やかだ。
「殿下、調度殿下にお話したいことが・・・」
「レジナルド」
レジが話を切り出そうとしたのを、ナラマが名前を呼び制す。旅の事や獣人のこと、自分の正体など、話したいことは山ほどあるレジはナラマの次の発言を待つ。
「私も話したいことはたくさんあるんだが、まずは食事をとらないかい?」
「ぐぅ〜〜〜」
「こちらのお友達のお腹がそろそろ限界みたいだよ」
「ルゥ・・・」
急かすようにナラマの服の裾を引っ張っていたルゥが腹の音で返事をする。国王を相手にいつもと変わらない様子のルゥの姿に、その場にいたもの達はつい呆れ顔になる。自由というか図太いというか、流石獣人の王というとこだろうか。
にこにこと笑うナラマに続き、勤務時間中であるランスを除いたルゥ達四人は食堂へと向かった。
「ルーファス、城に着く前に露店で揚げ饅頭をたらふく食べていなかったか?」
「あれはただのおやつだ。もう消化した」
先程豪快に腹を鳴らしていたルゥに対してノエルが呆れ顔で耳打ちをする。確かに飯はまだであったが、先程食べていた饅頭は何処へ消えたのか。これが育ち盛りというものなのかと、ノエルは自分の遠い記憶を辿ってみた。
ナラマに連れていかれた先には、既にテーブルいっぱいの料理が湯気をたてた状態で並べてあった。ルゥの希望通り肉料理をメインに、様々な種類の豪華な料理はどれも美味しそうである。
「こりゃすごいご馳走だな!」
「それは何人で食べる量なんだ・・・?」
「ぐぅ〜〜〜」
並べられた料理を目の前に三者三様の反応のダグ、ノエル、ルゥ。すすめられるままにそれぞれ席に座る。
「王宮の料理は美味いぞ!」
レジは見慣れた光景であるのか慣れた様子で皿に料理を取り分け、隣に座ったルゥへと渡す。どうやら大皿からバイキング形式で取り分けるスタイルらしい。
「好みや食べる量がわからなかったからね、好きなものを選べるようにしてもらったんだ」
そう言うナラマも自ら料理を皿へと取り分け始める。それに習うようにダグとノエルも料理を取り分ける。
「ルーファス君、これ私のおすすめなんだ、ヤギのミルクのチーズ」
「食べる」
いつの間にか仲が良くなっているルゥとナラマ。すすめられるままに皿にチーズを乗せてもらい肉と一緒に食べてみる。なかなかに美味。
その後暫くは腹を満たすことを優先したルゥのために会話もそこそこに食事をする五人。食べ切ることが難しいと思う程あった料理は、大食い揃いだった事もあり驚くことに完食された。
「レジナルドがよく食べるのは知っていたけど・・・みんな凄い食べっぷりだね」
ナラマも流石に完食するとは思っていなかった様で驚きに目を丸くする。見るからに食べそうなダグは勿論、レジもルゥも、実はノエルもかなりの大食いなのだ。
「ご馳走さん!美味かったぜ」
「ランドールの料理は味付けも幅広くて飽きないな。つい、食べすぎてしまった」
「満腹」
テーブルの上が綺麗に片付けられ、食後のお茶が運ばれる。
「殿下、そろそろ本題に入ってもいいですかね」
一同が一息ついたところでレジがナラマに改めて会話を持ちかける。王城に来た目的は食事ではないのだ。
レジの言葉に相も変わらずにこにこと笑顔を崩さないナラマが四人を見渡す。そしてナラマが発した言葉に四人は驚かされることになる。
「そうだね、聞かせてもらおうかな。私も気になっていたんだ・・・
“獣人の王“が尋ねてくるなんて一体どういうことだろうってね」
「「「「!!」」」」
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