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再び交わされた約束

「つまりは元々死が近かったんだ。引き金は戦争にあったかもしれないけど、それが無くてもいつかは限界がきてた」 ルゥとダグの言葉を聞き、ナラマは呆気に取られたような表情をしていたが、またゆっくりとその顔に笑顔が戻る。 「先代の獣人の王がランドールに協力した理由は知らないと言っていたね」 「ん」 「聞いたかもしれんが忘れちまった」 当時を知るはずのダグが忘れてしまっていては、産まれていないルゥは知る術もない。二人の様子にナラマは微笑む。 「これも書物に記されていたんだけどね、先代の獣人の王は若い時にランドールの当時の王と親友だったそうだ」 「親友?」 先王が若い頃と言えば何百年も前の話だろう。既に人間から距離をおいていた獣人達だが、なんのきっかけか先王と当時のランドールの王には親交があった。しかもそれはかなり深い友情であったらしく、二人は互いに約束を交わしていた。 “どちらかが助けを求めれば、なにを置いても駆けつける” 勿論人間であるランドールの王は先に獣人の王を残してこの世を去った。 「そして何百年も経った時代で、ランドールの当時の王、私の祖父が偶然獣人の王に出会い助けを求めた。時代も違えば約束の相手でもないのに、獣人の王は相手が“ランドールの王”であったため、力を貸してくれたんだ」 助けを求めれられれば、駆けつける。その約束は獣人の王にとっては自分が死ぬまで続くものだったのだ。 「だから私も、当時の王に変わって約束を果たしたいと思う。 次は私に獣人達を助けさせておくれ」 里を作るための土地と、人々への理解。それを全力でサポートしよう。そうナラマは言った。 「殿下っ!!」 「おぉぉぉー!!本当か王様!!」 すぐ様レジとダグが声を上げ喜ぶ。 「里復活への大きな一歩だな」 「ん。ありがとうランドールの王」 ノエルがその大きな手でルゥの頭をわしゃわしゃと撫でる。何年もダグと二人、旅を続けていたことを知っているノエルとしてもとても喜ばしい出来事だった。 控え目ではあるが嬉しさが伝わってくるルゥの表情にナラマも更に笑顔を深める。 まだ18歳だというのに、多くの獣人達の未来の為に動くルゥは、ナラマの目にはしっかりとした王の姿で写っていた。しかしその嬉しそうに赤い瞳を細めて笑う顔はやはり幼く可愛らしい。 「ランドールの王なんて堅苦しい呼び方はいいよ。歳は違うが私達も親友を目指してみないかい?」 「・・・ナラマ?」 「なんだいルーファス君」 「俺もルゥでいい」 ナラマが差し出した手をルゥはしっかりと握り返した。数百年ぶりに再び獣人の王とランドールの王の間に、新たな絆が生まれた。 「ナラマの笑い方とレジの笑い方は少し似てるな」 「そうかい?やっぱり子は親に似るって言うからね」 「俺は殿下ほど表情筋弛んでないですよ」 「?」 笑うと目尻が下がって優しさが増す所がなんとなく似ているなと思い言った言葉に対しての、ナラマとレジの返しにルゥは頭にハテナを飛ばす。 「それにしてもレジナルド、別に今は勤務中でもないんだ、敬語はいらないよ」 「いや、一応使用人達もいたからな。あんま王様相手にフランクに話すのもあれだろ」 「私は気にしないさ」 急にフランクな話し方になったレジの様子にルゥだけでなくダグとノエルも不思議そうにする。王直属の王国騎士団の元団長とは、ここまで王と気軽に話すものなのかと。 しかしその疑問はすぐに解決された。 「実は俺の育ての親ってのは殿下なんだよ」 「レジナルドの父親が私の級友でね、彼と彼の奥さんが事故で亡くなったのを知って引き取ったんだ」 まさかあの奥さんが獣人だったとは気づかなかったなぁ〜と呑気に言うナラマ。 「え、じゃあなにか、レジは王子って立場なのか?」 「違う違う、あくまで育ての親ってだけで養子に入ったわけじゃないからな」 「レジナルドのご両親は素晴らしい人達だったからね。親は彼らであるべきだと思って養子にはしなかったんだ」 しかし親のように良くしてもらっていたのは事実であり、二人の間には家族の絆のようなものがある。だからこそ、レジはナラマとの間にあった見えない違和感を突き止めたくて旅に出たのであろう。そしてその正体が分かっても、その関係自体が変わらない自信があったのだ。

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