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ふわふわで温かい
暫くの間ノエルの部屋でゆっくりしていた三人の元へレジがやってきた。どうやら王宮内の知り合いへ挨拶に行っていたらしい。
「これからのことは殿下と話し合いながら色々決めていくとして、明日からはまず、身近なもの達と交流をしてみようと思う」
今後の計画を立てていくためにも、まずはお互いのことを知らなくてはいけない。謎の多い獣人達のことを理解しなくては、共存する為の手がかりが掴めない。
「身近なものとの交流って、一体誰と何をするんだ?」
「まずは、獣人の身体能力を知ってもらう為にも軍の訓練所に顔を出してみようかと思っている」
「レジの仲間のとこか」
そういうことになるな、とレジは頷く。やはり獣人といえば一番知られていることが、その身体能力である。日頃から体を鍛えている兵士達との交流は、その力の証明にはもってこいである。そしてきっと、兵士達への刺激ともなるだろう。そうレジは考えたのだ。
「俺は明日別行動をとるぞ。王宮薬剤師に呼ばれているからな」
「ああ。みんなノエルに聞きたいことが沢山あるんだろう」
ノエルは医者であることと豊富な薬草の知識から、王宮薬剤師達に声掛けをされていた。王宮に仕えている薬剤師達は皆優秀であるが、やはりそれを上回る経験値の差をノエルは持っている。
優秀だからこそ教えを乞う機会が少ない薬剤師達にはまたとないチャンスである。そしてそれはノエルにとっても同じで、地域によって育つ薬草は違う。王宮には膨大な資料もある。それらを見れるチャンスはノエルにとっても貴重なのだ。
夕食の時間に再びナラマに呼ばれ共に食事をとった。昼以上に大量に用意された料理の数々は食べ切れる量ではなかったため、ナラマの声掛けによりその場にいたもの達全員での賑やかな食事となった。
「食事は大人数が楽しいからね」
本来なら大皿に料理を盛るバイキング形式をとることは無いらしいが、みんなで食事をわいわいと楽しみたいというナラマの希望でこの形をとっているらしい。
「ランス、明日は頼んだぞ」
「ああ、みんなも久々にレジが来るから凄い気合いの入り方だったぞ」
執務終わりを丁度捕まえたランスも食事に誘った。ランスも普段から度々ナラマに食事を誘われているらしく慣れた様子で食事をとっている。
部屋では借りてきた猫の様に大人しかったダグとルゥも、わいわいとした雰囲気の中での食事となれば緊張は解けたらしい。昼間と同じく皿に大盛りの料理を吸い込むように平らげていく。
「私も訓練を見に行こうかなぁ」
「王様って意外と暇なのか?」
「ルゥ!!」
明日の訓練を見に行こうかと言うナラマにルゥが放った素直すぎる一言。今日も昼間に噴水の近くを散歩していたし、食事もゆっくりと一緒にとっている。そして明日の訓練にも顔を出すとなれば、暇だと思ってしまうのも仕方がないのではないか。そうルゥは思ったのだが、レジに怒られてしまった。
「ん〜暇ではないんだけどね、でもたまには国の為に頑張るみんなの姿を見たいなって」
「なるほど」
「あとは、私も獣人の力とやらを間近で見てみたくてね」
多分というか、確実にそちらが本音だろう。出し惜しみするようなものでもないので別にそれは構わない。
食事を終え暫く談笑した後、再びルゥ達は与えられた部屋へと戻った。食事に向かう前に旅で汚れた衣類などは洗濯の為に侍女達に回収されており、代わりに肌触りの良いシンプルだが趣味の良い衣服が用意されていた。
(ふかふか・・・)
ルゥは早速その用意された衣服へと袖を通してみた。室内はどういう仕組みか冬だというのに温かく過ごし易い温度だが、更に程よく厚みのある服の温かさでルゥの体を包み込んだ。
(この服、いいな)
実は寒がりだということをレジから聞いたナラマが、ルゥには特別に温かい服を用意させていた。雪山に生息する毛足の長い山羊の毛で作られた軽くて温かい最高級の服である。
そんなことを知らないルゥはただただ温かく触り心地の良いそれにご満悦の様子。
コンコンッ
「起きてるか?」
ノックの後にひょっこりと顔を出したのはレジであった。レジもまた旅の最中に着ていた一般的な旅人の装いとは変わり、小綺麗な服装へと着替えていた。
「まだ眠くなければ、植物園に行ってみないか」
昼間に案内すると言われていた植物園。まだ時間も寝るには早かったため、ルゥはレジに連れられてそこへ行ってみることにした。
城の中には沢山の貴族と思われる人間や侍女がいたが、誰もがレジと共に歩くルゥに対して物珍しそうな視線は向けるが特別声を掛けてくることはない。
「殿下の友人として城内には知らせてあるからな。みんな、ルゥの事を何処かの国の王族か何かだと思っている」
「ふーん」
事実、王であるので間違いではない。そして本人は気づいていないが、元々の整った顔と今のように上品な衣服に身を包んでいると、最早生まれた時から王宮で暮らす身分の高い者にしか見えなかった。
通路をいくつか抜け庭に出る、更に奥まった先にガラス張りでほんのりと明かりの灯ったドーム状の建物があった。
「すごい」
「さぁ中へ」
レジに進められるままに中へと入ると、そこは色とりどりの花が咲き乱れる見事な植物園であった。天井近い高さまで背のある大きな植物や、丸々とした実を付けている植物。見たことがない植物が沢山あり、ルゥはキョロキョロと目を動かしながら植物園内を動き回る。
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