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仲間達

「王様、本当に見に来たんだな」 訓練は続いており今はレジが五人を相手に組手を行っている。ちなみに負けた者は3kmのランニングだ。先程ダグに負けた合計十人の団員が声を張り上げつつ走っている。 「やはり気になるからね。ちゃんと仕事もしているよ?」 「ははっ!疑っちゃいねぇよ!」 昨日ルゥに暇なのかと言われたからか、しっかり仕事をしてきたアピールをするナラマ。そのルゥはエドワードに剣の使い方を教えて貰っている。 「それにしても、獣人の身体能力とは本当に飛び抜けているね。君達全然本気を出していないだろう?」 「まあなあ。あいつらは確かに人間にしてはかなり実力はあるが、動きが読みやすい」 先程ルゥが見せたような常人では有り得ないジャンプや蹴りなど、そういった動きをすることが無い。当たり前のことではあるが、動きが想像の域を超えないのだ。だから予測して動くことも、避けることも容易いとダグは言う。 「見た感じ勘のいい奴が多いみたいだ、訓練すればある程度ルゥの動きでもついていける奴も出てきそうだがな」 「ほう!」 ダグの言葉に嬉しそうにナラマが反応する。 その後も訓練は続いた。少しだけの参加のつもりが団員達の希望もあり、午前中の訓練のほとんどに参加したルゥ達。全く疲れた様子のない三人に対して、更に団員達の獣人への尊敬が増した。 「獣人まぢすげぇっす!訓練の後なのに始まる前と変わらぬクールフェイス!!」 「お前は口だけは元気そうだな」 「体は限界っすよ〜!腹減った〜!」 この口だけは元気だが地面に仰向けに転がっているのは、現在騎士団最年少であるレオ。口と調子だけは人一倍良い元気がトレードマークの団員だ。最年少ということもあって他の隊員達にも可愛がられている。軍にいた際にレジが可愛がっていた後輩の一人だ。 「ルゥ君可愛い顔してパワーも体力もえげつないし!俺より歳下っていうからかっこいいとこ見せる気だったのに〜!」 「ルゥに勝とうなんてのはレオじゃ百万年経っても無理だな」 「そんなぁ〜〜〜っ」 初めにルゥに完敗したエドワードはルゥの事がかなり気に入ったようで、肩を抱き自らが褒められているかのように笑顔でレオを揶揄う。初めはエドワードの距離の近さに困惑していたルゥも、訓練を共にしたことで慣れたようで大人しく肩を抱かれている。 しかし、その事を面白く感じない者が若干一名いた。 「エド、あまりルゥにベタベタするんじゃない」 「おっと、どうしたレジ」 別にそれがただの嫉妬であることは本人も自覚している。それでも自分以外の者がルゥに触れていることがレジには面白くなかった。 「ルゥに暑苦しいのが伝染る」 「伝染らねぇよ!?」 珍しいレジの言動に思わず突っ込むエドワード。自分も暑苦しさではそう変わらないだろうと反論するが、レジは聞く耳を持たない。というよりも、今までエドワードの行動に対してそんな事を言ったことがないと言うのにどうしたというのか。 しかしそれはレジがルゥに向ける表情の柔らかさで一瞬で理解した。そしてそれは隣にいたレオや、周囲にいた団員達にもすぐにわかった。 (レジの奴、ルゥに惚れてんのか) (いや、確かにルゥ君綺麗な顔してるっすもんね) レジに聞こえないように小声で話すエドワードとレオだが、当の本人はルゥに構う事に夢中で全くこちらを気にした様子も無い。今までに見たことの無い元上官の姿に戸惑いつつも、余りに嬉しそうなその姿に特に口を挟む者はいなかった。 「暑苦しいのにはダグで慣れてる」 「・・・それ、ダグには言うなよ?」 昨日の告白のこともあるが、いつもと別段変わらないレジの様子にルゥもいつも通りに接する。元々レジのルゥへの好意は気付いていないのが本人達だけに近い程ダダ漏れ状態であった。 それだけ分かりやすく行動していて本人は周りに気持ちがバレていないと思っているのだから面白い。もしレジに尻尾があればルゥの傍にいる時は常にちぎれんばかりに尻尾を振り回している事だろう。 ダグに呼ばれルゥがレジから離れた隙にエドワードがレジを捕まえた。 「レジ、お前昔から女遊びに興味が無いと思ったら、男が好きだったのか」 昔からレジはそちら方面に対しての付き合いが悪かった。仲間内で騒いだり酒を飲んだりの付き合いは良かった為、おかしいとは思っていたと。 レジは何故エドワードが自分の気持ちを知っているのだと驚いたが、もう隠すつもりも無いため素直に答える。 「俺は男女とか関係なく、ルゥだから惚れただけだ」 「ははっそうかい!」 レジのまっすぐな返事を聞きエドワードは豪快に笑う。長年一緒にいたが何処か本心を隠していたように思えたレジの、きっと初恋だろう状況に立ち会えたことが嬉しかった。エドワードにとってレジは元上官でもあるが、可愛い弟のようでもある。そのレジの初めて見た少し照れ臭そうな顔はとても新鮮だった。

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