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無防備な寝顔

「レジ」 「ん?」 しばらくの間他愛もない会話をしていた二人だが、名前を呼ばれレジはルゥが寝転ぶベッドに近づいた。 「眠くなってきたか?」 そろそろお眠だろうかと顔を覗き込む。やはりその特徴的な赤い瞳は、予想通り先程より若干とろんとしている。 「今日はここで寝る」 「別にそれはいいが・・・」 旅の最中はルゥを抱えて眠っていたため一緒に眠ることは問題ない。・・・正確にいうとダグやノエルのいない状態で、しかも同じベッドで眠るというシチュエーションは今までに無かった為、問題が無いということもないかもしれないが。 昨晩は一人広いベッドで眠りについたルゥ。ふかふかのベッドは心地よくかなりいい睡眠がとれた。 しかし物足りなさがあった。部屋は温かく服も布団も寒さを感じることは無かった。だが、起きた時にいつも感じる温もりと、「おはよう」という声掛けが聞こえない。それがなんだか心地よかった眠りを半減させた。そして、 「俺はレジの匂いが好きらしい」 「え!」 部屋に入りベッドに寝転んだ時から感じていた。とても落ち着く、と。 突然のことでレジは嬉しいような照れくさいような気持ちになったのと同時に、自分ではわからない匂いがどんなものか気になった。 (好きってことは、臭くはないはず、だよな?) それにしても好意を寄せる相手に言われる内容としては、なかなかにドキドキと胸がうるさく反応する。レジとしても大好きなルゥと一緒に寝れるのは嬉しかった。 しかしこの後レジはその事を後悔することになる。 改めて一緒に眠るために同じ布団の中へと入った二人。普段は座ったまま眠ることが多いため、レジが背もたれのようになり後ろから抱えるように眠っていた。その為レジからは大体ルゥの後頭部かせいぜい横顔くらいしか見えない。 そして今日は引っ付いて暖を取らなくても温かいベッドの上だというのに、いつもの様に引っ付いて眠るルゥ。しかも何故か今日はレジの方を向いて眠っているのだ。 すぐ目の前にある整った寝顔はすぅすぅとちいさな寝息がかかる程に近い。 (、こ、これは流石に・・・) 気持ち良さそうに眠るルゥに対してレジは完全に目が冴えてしまっていた。その無防備過ぎる寝顔といい、鼻先に感じる陽だまりのような匂いといい、落ち着いて眠れるものでは無かった。 何よりも好きな相手と二人っきりで、しかも密着してベッドに寝ているこの状況に平常心でいられる男が居るのだろうか。 (無理だろう!!) 心の中で一人突っ込みを入れるレジの下半身は、寝ているだけだというのに硬く反応し始めていた。 「ん・・・」 「!」 その事をバレないようにと少し身体を離そうとすると、温もりを求めてか先程までよりも更にレジへ擦り寄るように密着するルゥ。しかもまるでレジを抱き枕にするかのように足を絡めてきたのだ。 より密着したことと、絡んだ足が下半身へと触れ熱が余計に集まる。もぞもぞと心地よい位置を探すように動くことで刺激され、レジは頭を抱えたくなった。 自分に対して無防備な姿を見せる程信頼されていることは嬉しい。だが、告白した身としてはもう少し意識してくれてもいいものではないか。そう完全に芯を持ち硬くなってしまった下半身の存在を感じながらレジは思った。 「・・・」 「んぅ〜・・・」 目の前の気持ちよさそうに眠る顔を恨めしそうに睨んだレジは、開き直ってその自分より一回り小さな体をギュッと抱き寄せた。息苦しかったのか小さく唸ったが、起きる様子はない。それどころか自らも首筋に擦り寄ってくるという無防備さ。 しかもレジはとんでもないことに気づいてしまった。生理現象であるだろうが、足に触れているルゥの下半身も若干熱を持っているという事実に。少しだけ考えた末にレジは思い切った行動に出ることにした。 「・・・ルゥが悪いぞ」 そう言い訳のように呟き、起きている時よりも幼く見える表情で気持ちよさそうに眠るルゥへとそっと手を伸ばした。

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