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ここに決めた
「大丈夫だったか?」
「驚く程快適だったよ」
「馬よりも全然揺れが少ないな」
無事にナラマが落下することなく目的地に到着し一同は安心した。
初めに訪れた候補地はランドニアから一番近い距離に位置し、周囲の街とも比較的隣接している。しかしその道中に大きな川が流れており通行が困難な為、程よい立地の割りに開拓されていないらしい。
ルゥ達は川幅が狭くなっている箇所を見つけ、そこを飛び越えてここまでやってきた。
「緑も多いし水もある。いい所じゃないか」
「橋さえ掛けてしまえば問題ないな」
ダグやレジの言う通り通行の便さえ整ってしまえば、住みやすそうな土地である。ルゥも虎の姿のまま周囲をうろちょろと歩き回り観察する。
ちなみに人型に戻らないのは今戻ってしまうと真っ裸だからである。何度も服を脱ぎ着するのが面倒なので獣化したままでいることにしたらしい。
一通り周囲を見て廻ったルゥはナラマ達の元へと戻る。
「どうだったかい?」
「良い。木は多少切ってもいいのか?」
「構わないよ」
獣人達の住まいを作るためには多少木を切って拓けた土地を作る必要がある。この周囲の木々は人がほとんど来ない手付かずの土地である為かどれも立派だ。良い材木になりそうである。
特徴やポイントなどを書き込み次の候補地へと向かう。ナラマがあげてくれた候補地は一つでは無いのだ。
いくつもの土地を見て回る中でルゥ達は改めてランドール王国の広さを感じた。その国土の広さに見合った街の数と国民がいるというのに、未開拓の自然が多くある。そしてやや南寄りに位置するため植物の実りも良い。どの候補地も魅力的であった。
予定よりも巻きで視察を終えたルゥ達はどうにかその日のうちに王都に戻ることが出来た。
「悪いね、私のせいで急かしてしまって」
それも公務の合間に視察に参加していたナラマが居たためであるが、それを良しとしたのはルゥ達なので特に文句はない。しかし、流石に一日中道無き道を駆け回った獣人三人はヘトヘトであった。特にナラマとランスの二人を乗せて走り続けたルゥは、いつもの涼しい表情では無く少しだが顔に疲れが出ている。
「・・・最近甘い物ばっか食べて過ごしてたし、運動不足だったかも」
ランドニアに来てからというもの、たまに軍の訓練に参加などはしていたとはいえ明らかに運動不足であった。それにプラスで美味い食事を毎日満腹になるまで食べ、仲良くなったシェフ達にスイーツを餌付けされていた。
実際は今日の運動量が凄まじかっただけなのだが、明日からもう少し運動しようと考えるルゥは意外とストイックなのかもしれない。
「良い場所はあったのか」
「ん、決めた」
城に残っていたノエルに尋ねられルゥは今日見て直感で決めた里の候補地を地図で示す。そこは一番最初にみた土地であり、王都との距離が最短の場所でもあった。
「里を作るだけならどこも良かったけど、王都で働くってなったらこのくらいの距離が丁度いい」
今日見て回った候補地はどこも捨て難いほどに良い条件のものばかりであった。それは勿論ナラマがある程度条件を絞ってくれていたおかげではあるのだが、そうなってくると里が完成した後の獣人達の生活の事を考える。
ナラマからの条件として労働力を提供することを約束したため、その職場となるランドニアや他の街との距離がある程度近く無くては通うのが大変だ。その点、初めに訪れた候補地であれば最短の位置に川を渡る為の橋を掛ければ、王都まで獣人達なら一時間程で行くことが出来る。今日のように獣化して駆け抜ければもっと速く着くだろう。
そしてもう一つ決め手になることがあった。
「アミナスの木があった」
「生命の木か!それは珍しい」
アミナスの木、それは生命の木とも言われているとても珍しい木であった。アミナスの木には生物の命が宿るという。集まった生命エネルギーでその周囲では作物がよく育ち、新たな命が生まれやすい。古来よりアミナスの木は里や村など人々が集まる場所の守神のように扱われていたという。
しかしその存在はとても珍しく、樹生する地域もバラバラである。そのアミナスの木があったというのはナラマも知らなかった事実だ。
「獣人達のこれからを思うとこれ以上ない好条件だな」
「ん」
良かったな、とノエルが大きな手でルゥの頭を撫でれば嬉しそうに頷く。これまで進展を見せなかった里復活計画が、今日また大きく進んだ。
場所が決まれば次は土地を開拓し、住処を作る。川に橋を掛けるという大仕事もある。
「よし、みんなを集めてくれ」
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