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集合

軍の訓練場の一つに、その日沢山の人々が集まっていた。その集まった男女の誰しもが平均よりも恵まれた体格をしており、様々な地域の服装をしている。 「凄い・・・これが全員獣人なのか」 「声掛けからまだ数日だからな、それでも200人近く集まった」 そう、そこにいる人々は皆獣人である。数日前にルゥが里を作る場所を決定させ、その土地の開拓の為に獣人達に招集をかけた。 “遂に里の復活が行われる” そうダグから伝達を受けた獣人達は急いで周囲の街など、獣人達が潜伏している場所へ知らせに走った。元々ルゥがランドニアに拠点を構えた時点で少しずつその周囲に集まりつつあった獣人達は、数日でこの人数が集まることが出来た。 久々に顔を合わせたもの達も多く、訓練場に集まった獣人達の表情はみんな嬉しそうであった。そして何よりも、その場に彼らの王がいるからという事が大きく、そしてその王が自分達の為に里を復活させようとしているからというのが大きい。 「みんな、長く待たせてすまない」 集まった獣人達の前で、ルゥはまず謝った。それはルゥが里を復活させると決めてから既に10年という年月が経っていることに対して。 しかしそのルゥの謝罪に対して獣人達の反応はこうだった。 「謝らないでください!」 「俺たちの為に王が動いてくれていただけで、俺たちは嬉しいんだ!」 「そうよ!それに10年なんて待ったうちに入らないわ!」 「こうしてまた獣人が集まれたことに感謝しよう!」 誰もルゥを責めるものなどいない。王であるルゥが獣人達のことを想って旅を続けていたことは、誰もが理解していた。獣人達にとってはまだ幼過ぎると言っても過言では無い王。しかし、その王に対する気持ちは年齢など関係ないのだ。 再び王と会えたこと、王と共にあれること、これからの生活を思えば何も苦などなかった。 その獣人達の反応を見て、ルゥは再び話し出す。 「里を作る場所はランドールの王、ナラマ国王の協力があって決めることが出来た。でもそこはまだただの森だ。だから、みんなの力でそこを、俺たちの里に作り上げたい」 ルゥの言葉に獣人達は拳を上げて盛り上がる。獣人と人間との共存を望んでいること、里を作るにあたって獣人達に街で職について欲しいこと、それらは事前に伝えてあった。 そのおかげもあって獣人達への説明はとてもスムーズだ。実際、説明が無かったとしてもルゥがそう望んでいると言えば誰も反対することは無いのだが、しっかり理由を一人一人に説明したのはルゥがそうしたかったから。 自分だけの考えでは無く、獣人達が納得した上で実行したかった。 まずは獣人達を3つのグループに分けた。一つは里を作るための土地の整地、一つは川を渡る為の橋作り、そして一つは王都での職場体験を行うため。 まだ獣人達のことは公表前であるが、だからこそ事前に王都の人間と打ち解け易くする為に交流を図ることにした。それにはナラマも協力してくれており、新たな街の増設に伴って職を探している人々がいると事前に職場に通達してくれていた。 王都は元々人に溢れかえっている。そして人が多い分、仕事も沢山あるのだ。その為様々な職に就くものがその通達を受け入れてくれた。 その3つグループは数日おきにローテーションする。そこで少しでも街の人々との間に受け入れの基盤となるものが出来てくれると良いなとルゥ達は思っていた。 「あいつらは上手くやるさ!何せ獣人ってのは気のいい奴が多いからな!!」 ガハハと豪快に笑うダグが言う様に獣人は本来、集団生活が得意で人懐っこい性格の者が多い。獣から野蛮で短気なイメージを持たれることも多々あるが、そういった性格の者は少数派なのである。 自由を好むからこそマイペースでおおらかなのだ。 ルゥが口数が少ないながらも様々な人から好かれているのも、その根本にある人懐っこさのおかげであろう。 「俺は橋を、ルゥは里の方を、レジは街の方をそれぞれ指揮すればいいんだな」 「ん、よろしく」 「こっちは任せてくれ」 ルゥ達もそれぞれ3つのグループの指揮者として役割を分担した。一番時間がかかりそうな里の整地にはルゥが責任者として、橋のグループにはダグが、そして街の人々と交流のあるレジが職場体験の見回りを担当することに。 獣人達は分けられたグループごとに集まり、自分達の持ち場へと移動していく。 始めて顔を会わせるレジは緊張していたようだが、獣人達にそんな心配は無用。ハーフだろうと同じ獣人であれば仲間であり家族である。すぐに打ち解け合い、ルゥがレジのおかげでランドールの国王に会えたことを話せば大いに盛り上がった。

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