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ここからがスタート
「王!まずは何から取り掛かりましょう!」
「俺達めちゃくちゃやる気なんでなんでも言ってください!!」
土地の開拓のグループになった獣人達はこぞってルゥの周囲を取り囲む。獣人の中では比較的まだ小柄なルゥはあっという間に埋もれてしまった。
事前に土地の開拓の手順はナラマやノエルに教えてもらった。まずは家を建てるにもその為の地盤を整えなくてはならない。里を作る予定の地は比較的平地ではあるが、人がほとんど踏み入れていない土地であるため樹木が生い茂っている。
「まずは・・・」
ルゥが口を開くと周囲の獣人達がキラキラした目で見つめてくる。見た目だけで年齢を判断することは難しいが、この場にいるほとんどの者が歳下の王の言葉を今か今かと待っているのだ。
「…まずは、俺のことを王って呼ぶの、やめて」
「「「「「!?!?」」」」」
「あと、敬語もいらない」
これは以前から考えていたことであった。確かに王であることに間違いはないし、敬語を使われる対象であることも理解している。しかし、理解しているからといって受け入れているわけではない。
「俺には名前があるし、敬語も好きじゃない。だから、禁止」
そう言えば戸惑ったような反応を見せる獣人達。今まで当たり前のようにしてきたことを急に禁止と言われてしまえばその戸惑いも仕方ないが、王の言葉は絶対的である。
「じゃ、じゃあルーファス?」
その中の一人、比較的若い獣人が恐る恐るルゥの名前を呼んだ。
「ん」
それに対して頷きを返すルゥ。その口角は満足そうに若干上がっており、丸い赤い瞳は柔らかく細められる。
その笑顔を向けられた獣人はぶわっと全身の毛が撫でられるような感覚と共に体温が上昇したのを感じた。それはルゥの喜びが直接伝わってきたかのような不思議な感覚であった。そして同時に自分自身の中にもぽかぽかとした優しい気持ちが芽生える。
それは周囲にいたもの達にも伝わり、みな我先にと争うかのようにルゥの名前を呼んでいく。
「ん、それでいい」
聞き慣れた響きの名前で呼ばれることで嬉しさと、何度も連呼されるちょっとした気恥しさにルゥは困ったように微笑む。その可愛らしい笑顔を見ただけで、獣人達は何だか泣きそうなくらいな大きな幸せを感じた。
落ち着いた所で数人に分かれ大きな木を切り倒していく。一本一本がかなり立派なサイズな為切り倒すのも一苦労であるが、そこは流石獣人というべきかあっという間に倒された丸太の山が出来ていった。
「イルダ、この木、橋の材木にするから運んで欲しい」
「おう!任せとけ!」
「ルゥくーん!こっちの木も切っちゃっていいかなー?」
「その横の木まで切っていい。カイオス、そこが終わったらこっち手伝って」
「おっけーい!」
ルゥの指示に従い木を切ったり運んだり。大木の丸太を軽々と担いで運んでいくのは、怪力自慢のイルダ。ダグと比べても負けず劣らずな巨体を誇る男である。そして斧を軽快に振り回し木を切り倒していくのはカイオス。軽い口調とは裏腹に作業の手はとても正確で素早い。
それぞれが自分の特技に合わせた作業に取り掛かることで、思っていた以上にスムーズに開拓は進んでいく。
「ルゥ!調子はどうだ」
「ん、なかなか順調。そっちは?」
「こっちもいいペースだぞ!」
昼頃、様子を見にやって来たダグ。その腕には大量の魚が抱えられていた。
「・・・それは?」
「昼飯だ!そろそろみんな腹が減ってきただろう。飯にするぞ!」
「「「「「おぉーーー!!!」」」」」
ダグのその言葉に周囲の獣人達が集まってくる。よく見るとダグ以外にも魚や森で狩っただろう鹿や鳥を抱えた者もいる。確かに朝から作業を始め、大分腹が減っていた。しかし失念だ。人数が人数なだけにこれではまだ食材が足りない。
「おーい!ルゥーーー!!!」
「?」
その時、ダグ達が橋を作っていた方角とは別方向からルゥを呼ぶ声が聞こえた。みんなその声の方向に何事かと視線を向ければ、何頭かの馬がこちらに向かって走ってきている。そしてその背に乗った人物にルゥは見覚えがあった。
「へぇー!ここが里の予定地か」
「ルゥ君久しぶり!」
「エド、それにレオも、どうしたんだ?」
それは王国騎士団の団員であるエドワードとレオであった。二人はルゥ達の元へ駆け付けると、その周囲にいる獣人達を見てピューゥと口笛を吹く。
「こんなに沢山の獣人達がいるとはな。朝から馬を走らせた甲斐が有るってもんだな」
「さあさあ皆さん、荷を下ろすの手伝ってくださいよ!」
「??」
エド達の言葉にルゥを含め周囲のもの達は皆頭にハテナを浮かべている。
「何ボケっとしてんだ。昼飯まだだろう?」
「食料いっぱい持ってきましたよ!!」
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