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王の望む未来
「レジナルド、そろそろルーファスを起こしてくれ。昼にしよう」
「わかった」
昼食の準備が出来てきたことでノエルにそう指示をされたレジ。レジがこの場にやってきた時からずっとアミナスの木の根元で眠り続けているルゥの元へ行く。
誰かが掛けてくれただろう毛布に包まれすやすやと気持ち良さそうに眠るその横には、寄り添うようにふわふわとした白い毛の兎が丸まって眠っていた。
「動物にまで人気なのか」
足音と声に驚いたのか兎は耳をピクりと動かし、そのまま森の方へと駆けて行った。その時ちらりと見えた兎の目の色がルゥと同じ赤い色をしており、小さなルゥを見たようで癒された。
「ルゥ、そろそろ昼だぞ」
「・・・ぅ、ん、、」
余程疲れていたのか、丁度柔らかく陽射しが射し込むこの場所の寝心地が良かったのか、なかなか目を開けようとしないルゥ。その様子にやれやれと思いつつレジは優しくその肩を揺らす。何処でも寝れるようで実は警戒心の強いルゥが熟睡しているということは、この場にいる者達を信用しているからでもある。
そのことを知っているので、ゆっくり眠れていることに安心する。しかしそろそろ起きて貰わないと困る。
「ルゥ、ほら、起きるんだ」
「んー・・・・・・レ、ジ?」
「おはようルゥ」
頬を両手で包みさわさわと首筋を擽るように撫でれば、ようやくうっすらと目を開けたルゥ。そして視界に入ったレジの姿に一瞬不思議そうな顔をし、それからまたゆっくりと目を閉じた。どうやらランドニアの街に居ると思っているレジの姿に、まだ自分が寝ていると判断したようだ。
「こらこら、起きなさい」
「んん゛〜〜〜」
再び眠ろうとする姿に苦笑しながら先程よりも少し強めに頬を揉む。そうすれば流石に寝ていられなかったのか、ルゥは渋々といった感じに重たい瞼を持ち上げた。
「・・・レジがいる」
「街の方が落ち着いたからな、手伝いに来た」
「そうか」
んぅーーーーっと声を上げながら伸びをすると、先程よりも少し目が開き射し込む陽射しでキラキラと瞳が光る。そして周りを見渡せば、随分と朝よりも作業が進んでいることに気付いた。
どうやら自分は思っていた以上にのんびりと昼寝をしていたらしい。そう思うと同時にキュルルゥーーっと狂うことを知らない体内時計により、ルゥの腹から可愛らしい音が鳴る。寝ていても腹は減るようだ。
「腹減った」
「みたいだな。ほら、みんなが待っている」
「ん」
レジの手を借り立ち上がると、二人は揃ってみんなの元へ向かう。昼食が出来上がっていることもありいい香りが漂っている。
朝から作業もせずに寝ていただけということに若干申し訳なさを感じつつ近づけば、皆文句の一つも言わずににこにこと迎えてくれる。
「よく寝れたか?」
「今日は天気も暖かくて絶好の昼寝日和だよな〜」
「今夜は宴会だからな、夜は寝かせないぜ?」
ガハガハと笑う陽気な獣人達はどうやら今夜の宴会が楽しみで仕方ないらしい。言葉の通り、今夜は寝かせてもらえないかもしれない。
獣人の好きな物はわかりやすい。王と酒と肉、その三つである。
ルゥは今夜のことを思うと、昼寝をしていて正解だったなと思った。
昼食を食べ終わり午後の作業へとうつる。ノエル達の指示はとても的確で作業は問題なくスムーズに行われていった。午前中は参加させて貰えなかったルゥも、午後は他のものたちに交ざり丸太を運んだり杭を打ちつけたりと忙しく動いた。
成人した獣人達に比べるとどうしてもまだまだ一回り体の小さく見えるルゥだが、その力は全くと言っていい程負けを取らない。通常であれば力自慢であるはずの軍人達は、完全にサポート役に回っている。
「ファーネスさん!その板俺が運びますよ!」
「あらあらいいのよ。私力持ちだから」
それは女性でも同じであり、壁に使う為に纏めていた板を一人で運ぼうとしていたファーネスにレオが慌てて駆け寄るが、笑顔でそれを持ち上げてしまうファーネス。軽く50㌔程ある板の束を色気むんむんのお姉さんが、まるで子犬を抱くかのように軽々と持ち上げる姿に呆気にとられてしまう。
「ふふふ、力の強い女は嫌かしら」
「い、いえ!むしろ大好きです!!」
「あら」
謎の告白をするレオに周りにいた者達から笑いが起こる。レオも自分の発言の可笑しさに気付き顔を赤くして慌てている。
その姿を少し離れた所で見ていたルゥとレジもまた笑顔になる。
「いいな」
「なんだ?」
「獣人と人間が、人種に関係なく笑いあっている」
「そうだな」
まだ関わりのあるのはほんの一部の人数であるが、そこにはルゥの望んでいる未来があった。人も獣人も関係なく、笑い合える日はきっと遠くないのだろう。
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