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今夜は宴会だ
「みんな、グラスは持ったな。では、」
『かんぱーい!!!』
ダグの掛け声に合わせて一斉にグラスを掲げる。夕方には街で職場体験をしていたもの達も続々と里の方へとやってき、久々に獣人達総勢200人が集合した。
手の空いた者から準備を始め、日が沈む前には大量の料理と酒樽の山が出来上がり、即席の宴会会場の出来上がりだ。
「いいのか、俺達まで参加させてもらって」
「いいさいいさ!一緒に里を作ってくれてる仲間だからな!!」
「一緒に楽しもうぜ!!」
ランスやエド達騎士団員も獣人達に囲まれ宴会に参加している。宴会会場となったアミナスの木の周辺は夜だというのに昼間以上に賑やかだ。
「ルゥ!かんぱーい!!」
「ルーファス、こっちもこっちも!」
「かんぱーい!!」
次から次へとルゥと乾杯をする為にやってくる獣人達。あまりに続くそれにルゥは苦笑いしながらも、一人一人にしっかりと応えていく。
どうにか乾杯の列が途切れた頃には逆にルゥの喉はカラカラで、持っていたグラスを一気に飲み干した。
「ふぅ・・・」
「ほら、料理もいっぱい取ってきたから食おうぜ」
「ん」
ちゃっかりいつもの様に隣をキープしているレジが、ルゥの前に料理を盛った皿を並べた。お腹が空いていたルゥは有難くそれをつまむ。甘辛く味付けされた鶏肉は酒に合うようにか少し味が濃いめでとても美味しかった。
周囲ではハイペースで酒を飲む獣人達でかなり賑やかな空間が出来上がっていた。
「寒くないか?」
「ん、大丈夫」
冬だというのに外でもそこまで寒く感じない。それはみんなの盛り上がりも影響しているだろうが、生命の木であるアミナスの木の傍であることと、ルゥがいることが大きく関係していた。
アミナスの木には生物のエネルギーが集まる為、その周辺では凍えることはない。もし山で遭難することがあっても、アミナスの木を見つけることが出来れば生き延びることが出来ると言われている程である。
そしてそこに獣人の王であるルゥがいる。獣人達と王が共にある場合、王の力の影響は獣人達の心だけでなく天候さえ動かすという。王が安定していれば土地も安定し、王が倒れれば土地も荒れる。
そして今のルゥは周囲の支えもあり、とても安定した状態である。それが冬の寒さにまで影響するというのだから凄い。
「ルゥ!飲んでるかー!!」
「カナタ、だいぶ酔ってるな」
酒を片手にハイテンションにやってきたのはカナタ。獣人達の中では珍しく先王が亡くなってから生まれた若い獣人である。
「こらカナタ、あまりウザい絡み方してるとルゥに嫌われるぞ」
「えぇー!!それは嫌だ!!」
そしてカナタの後ろからやってきたスラリとした長身の男はマルコ。ダグ達のような豪快で男臭いタイプとは違った物腰の柔らかい珍しいタイプの獣人だ。
「一緒に飲もうぜ〜!」
「ん」
「レジ、隣いいかい?」
「おう」
ルゥとレジを挟んでそれぞれ両隣りに座るカナタとマルコ。既に出来上がっているカナタがケラケラと笑いながら楽しそうに話をし、時折周囲の獣人達も気まぐれに会話に入ってくる。
途切れることの無い会話に普段あまり自分から喋る方ではないルゥも、いつもより若干口数が多くなっている。元々話すのが好きなレジは酒のペースも上がりつつ、これまた楽しそうに会話をしている。
「ん?ルゥのコップ空じゃないかぁ〜!ほら、まだまだ飲むだろぉ〜!?」
「ん」
ルゥの持っていたコップが空になっていた事に気づいたカナタが、完全に酔っ払いのテンションで目の前に置いていたビンの中身を注ぐ。並々と注がれたそれをルゥはごくごくっと喉を鳴らしながら飲んでいく。その様子を横目で見ていたレジはあることに気付いた。
そのビンのラベルに書かれたアルコールの度数が異常に高いことに。
「って、おい!カナタ!!お前、もしかしてさっきからルゥにその酒飲ませてたのか!?!」
「ん〜?そうだぞ、これ美味いからなー!」
「ん、美味い」
本来ならルゥはまだ飲酒をするような年齢ではない。だが、それは人間の法律であって獣人には関係無いと言い張るルゥや周りのもの達の言葉に押し切られ、レジはルゥが酒を飲むことは認めた。しかし普段、特に進んで酒を飲むことは無いので、ルゥの為にアルコール度数の低めの酒を用意していたはずだ。
それなのに今ルゥが飲んでいるのは酒場に置いてある酒の中でもかなりアルコールの強いものである。
「まあまあレジ君、ルゥは酒が強いみたいだし大丈夫じゃないかい?」
確かにマルコが言うように顔色もいつも通りの透き通るような白さで、特に酔った雰囲気でもない為、心配し過ぎなのかもしれない。何より、酒の強い獣人達のトップであるルゥなら、それこそこれくらいのアルコールでは酔わないのか、、?と疑いつつも納得しようとしたレジ。
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