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俺達付き合ってます
「レジ」
「ん?どうした、やっぱり酔ったか?」
コップを置きもたれ掛かってきたルゥに、レジはやはり酔いが回っているのではと心配そうにその顔を覗き込む。すると、目の合ったルゥは珍しくにこーっと目を細め無邪気な笑顔を向けてきた。そしてそのふわふわの白い頭からぴょこんっと白い獣の耳が飛び出している。
その普段とは違う表情をするルゥに驚いているレジに、ルゥは更にグイッと顔を近づける。
「レジはこの姿の俺、好きだろ」
「えっ!あ、いや、好きだが・・・」
確かにレジは普段のルゥも勿論好きだが、半獣化したふわふわの耳と尻尾のある姿も大好きであった。しかしそれを急に、しかも普段見せない程の満面の笑みで言われると、何故か妙に恥ずかしい。しかも今は周囲に沢山の獣人達とランス達軍の仲間達もいる。どのような反応をするのが正しいのか、レジは迷っていた。すると、
「気分が良いから、今なら好きなだけ触っていいぞ」
「え!?」
そう言い二人だけの時にするようにルゥが向き合う形でレジの膝に乗り上げてきた。相変わらずその顔はにこにこと笑っており、尻尾はレジの腕に絡みついている。
(って、ルゥのやつ、めちゃくちゃ酔ってるじゃないか!!!)
そう、距離がぐっと近付いたことでわかったが、ルゥはかなり酔っ払っていた。それもそのはず、レジが気付いた時点でルゥはあのアルコールのやたらと強い酒を既に5本程飲み干していたのだ。顔色は変わっていないが、近くで見ると特徴的な赤い瞳が完全に据わっている。
「る、ルゥ、嬉しいが、それは後にしよう!今はみんなもいるし、」
「?別にみんながいても、俺は気にしない」
「俺は気になるんだよ!!」
状況的には今すぐにでもにこにこと笑顔で可愛いルゥを押し倒してしまいたいくらいの気持ちであるが、流石にこれだけ大勢の前でそのようなことは出来ない。しかしルゥにはそんなレジの気持ちが伝わっておらず、不思議そうに首を傾げながら赤い顔で慌てるレジの首筋にすりすりと頭を埋める。
「なぁ、」
「!!」
そして急に始まった二人のやり取りを静かに見守っていたカナタが我慢出来ずに口を開いた。
「やっぱルゥとレジはデキてるのか?」
その言葉に先程まで五月蝿いくらいに盛り上がっていたはずの周囲の視線が一気にルゥを抱えたレジに集まる。その間も上機嫌の酔っ払いであるルゥはゴロゴロと喉を鳴らして目の前のレジに甘えている。
正直このことについては獣人達の反応は読めない。別に隠すつもりも無いのだが、“みんなの” 王であるルゥとそういう関係であることに獣人達がどんな反応を示すのか。
レジは意を決してルゥと付き合っていることを言おうとした。
「俺たちは、」
「おっ、そうだぞ〜!レジはルゥにベタ惚れだし、ルゥもレジにべったりだからな〜!!」
「気づいたらイチャついてるな」
「!!」
レジが言うよりも先に少し離れた位置にいたダグとノエルがにやにやと笑いながら、簡単に二人の関係を暴露してしまう。そしてそれにつられるように、周囲にいたエドやレオまでもが、、
「しかもレジは独占欲丸出しだからな!」
「そうっすよ!この前俺がちょーっとルゥ君と肩組んで話してたら、すっげぇ怖い顔で邪魔しにきたり!」
「今日もルゥの隣をしっかりキープしてるもんな!」
ガハハと笑う姿は完全に酔っ払っている。それを示すかのようにエド達の周りにはたくさんの空き瓶が転がっていた。
ちょっとお前ら飲み過ぎだぞ、や、別に肩を組んだくらいでそこまで怒ったことは無いだろ、など言いたいことは山ほどある。が、今は目を丸くして固まっている獣人達の様子が気になって仕方ない。
しかし、
「やっぱそうだよな!いや、いつも二人から同じ匂いがしてるからそうだとは思ってたんだけど」
「ルゥが自分から引っ付いていくのもレジくらいだよね」
納得、といった顔でうんうん頷くカナタやマルコ。周囲にいる獣人達も似たような反応である。
あれ?と、予想とは違う反応にきょとんとした表情を見せるレジ。もしかしたらルゥを巡った乱闘が起こるのではと、少しだが思っていた。しかし実際はすんなりと受け入れられている。
「もうっ、私がいくら色目使っても相手にされないはずよね〜」
「っ!ファーネス」
レジは後ろから頭を軽く小突かれ驚いて振り返ると、そこには女性陣の中でもリーダー的存在であるファーネスが立っていた。
「ルゥったら全然私の色気に反応しないのよ。まったく、自信無くしちゃうわ」
「ルゥに何かしたのか!?」
「ちょっとね。相手にされなかったけど」
何をしたのかとても気になるが、聞くのも怖いのでそれ以上は突っ込まないことにする。何よりルゥが反応をしなかったというなら、あえて掘り下げるのは止めておこう。
いつの間にかそのルゥは、レジにもたれかかった状態で眠っている。首筋にかかる息とたまにピクりと動く獣の耳が頬に当たって擽ったい。
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