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旅芸団

ランドニアの街は今日も活気に満ち溢れている。 「俺達はこのまま城に向かうが」 ナラマに用のあるルゥ達はそのまま城へと向かう。一緒に王都までやって来たイルダとカイオス、そしてマルコとカナタはどうするのかと尋ねる。 「俺達は職場体験で世話になった親父さんのとこに顔を出してから、あとは買い出しだね」 「使いっ走りもいいとこだよな、ほんと!」 「俺は遊びにきただけだけどね〜」 「カイオスはあまりふらふらしないでくれよ」 どうやら職場体験で気に入られたのか声掛けがあったらしい。それはとても良い事だ。そしてそのついでに買い出しも頼まれたようだが、カナタの持っているメモを見る限りなかなかの量である。 カイオスは完全に遊びに来ただけなのか、うきうきと辺りを見渡している。問題を起こすような性格ではないが、その軟派な雰囲気のせいでどうしても不安はある。 「そういえば今日は広場に旅芸団が来る日なんだ。ちょっとだけ覗いてみないか?」 世界各地を旅をしつつその芸で人々を楽しませる旅芸団は、人の多いランドニアの街には定期的に足を運んでいた。丁度その芸団が今日やって来ていることを思い出したレジは、広場への寄り道を提案する。 同じ方向へ用のあったイルダ達も同行することにし、全員揃って広場へと向かう。そこにはすでに人集りが出来ており、その中央には旅芸団の団員だと思われるもの達が見えた。 「さあさあ皆さん!今日は私達のショーを楽しんでいって下さい!ロープより内側には入らないで下さいね!」 芸団員の男が観客達に挨拶をしながら仰々しくお辞儀をする。距離をとるためのロープが芸団員と客との間に置かれ、それによって出来た空間を使って派手な衣装に身を包んだ二人組が演奏に合わせて踊り出す。 ジャグリングや楽器の演奏、ダンスと次々と客を楽しませるための芸が繰り広げられる。 「お、熊が出てきたぞ」 カイオスが言うように芸団の馬車の荷台から男に連れられて熊が現れた。旅芸団が動物を連れていることは珍しくない。大抵の場合は生まれてすぐの状態から飼い慣らし芸を教え込まれている。 それにより人にも慣れており、客もその事を知っている。そのため森で出会えば恐ろしい存在であるはずの熊の登場に、驚きはしても観客達は期待に盛り上がる。 しかし、 「・・・おい、あいつまずくないか」 「かなり興奮してるな」 ダグとイルダが言うように観客の前に出された熊は興奮状態にあった。といっても、それは熊の獣人であるからこそ気づける範囲であり、現に調教師と思われる男や周りのもの達はその事に気が付いていない。 ランドニアは元々人口の多いランドールの首都であるため、勿論他の周囲の街と比べて人の数が多い。いくら人に慣らされているとはいえ、見たことも無い人の多さに興奮、というよりは怯えてしまっているように見えた。 「あんの馬鹿ども、あんな状態の熊を人前に連れ出すなんて何を考えているんだっ」 「落ち着け、普通の人間に獣の気持ちを理解するのは難しい」 普通の興奮状態であればまだ分かりやすいかもしれないが、怯えている今は熊も周囲を警戒していて大人しくしている。しかし、何かの刺激があれば瞬時に暴れだしてもおかしくない。 そして、その時はすぐにやってきた。 グガァァアァッ 「っうぁぁぁああっ!!!」 「きゃぁぁぁぁーーーー!!!」 人の多さに普段通りの芸が出来ない熊に対して調教師は少し強めにムチを打った。その事に緊張が張り詰めていた熊が口を大きく開き、牙を剥き出しで吠えた。そしてその鳴き声に驚いた荷馬車に繋がれた馬がヒヒィィイインっと甲高い声を上げ暴れ出す。 突然のことで反応の出来ない芸団員は唖然とその場に立ち尽くし、観客からは多数の悲鳴が上がる。 マズい、と思うと同時にその場を駆け出していたルゥ達。しかし位置が悪く、芸団を見るために集まっていた観客達が邪魔で容易に近づくことが出来ない。 「、チッ」 「クソっ、ルーファス!!」 咄嗟に獣人の力を解放し半獣化したルゥ達は観客達の上を飛び越えた。そして今にも調教師に向かい襲いかかろうもしていた熊をルゥが、暴れる馬達をダグ、マルタ、レジの三人で、倒れかけた荷馬車をイルダが抑え込む。その隙に急いでカナタが熊を入れる為の鉄の檻をルゥの元へと引き摺っていく。 「騒ぐな!余計に動物達が興奮する!!」 ノエルが叫んだことにより悲鳴を上げ逃げ惑っていた観客達は息を飲む。 「っ大丈夫だ、落ち着け」 グルルゥゥウゥ・・・ 未だ興奮状態である熊を押さえつけたままルゥが優しく語りかけた。自分よりも大きな熊や馬を押さえつけるルゥ達の姿に混乱していた周囲のもの達は足を止めその様子を見守る。 「大丈夫だ」 もう一度ゆっくりと、ルゥが語りかけると牙を剥いていた熊は徐々に落ち着きを取り戻し、静かにその場に座り込む。 「ん、いい子だ」

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