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一体どこから

「俺の記憶ではその変異種は摂取すると、数時間後には全身の機能が麻痺して呼吸が止まるはずだが」 しかし村人達に症状が出てから既に二週間ほど経っている。そして呼吸が止まるという最悪の状態まで陥っている者はいない。 そしてもう一つ重要な点として、村人全員に症状が出ているということ。ルルカタの花は群生することが無い。その為変異種が発生したとしてもそれは一株、多くても数株しか無いはずである。その少量が村人全員の口に誤って入るという事は考えにくかった。 今は薬の効果で症状が落ち着いているが、体調不良の根源となるものを無くさなくては意味が無い。 ルゥ達は手分けして村人達に聞き込みと周囲にルルカタが自生していないか探した。 「周囲にはルルカタらしい植物は無いぞ」 「住民たちも見たり薬として使った覚えもないらしい」 「一体どこから・・・」 手がかりは無く周囲も暗くなり皆が頭を抱え始めた頃、ルゥがふらりと立ち上がった。 「・・・わかった、水だ」 「水?・・・そうか!この村の飲水はどこから引いている!」 ルゥの言葉でピンと来たノエルはすぐに村人に確認すると、どうやらこの村では山の湧き水を飲料水にしているらしい。すぐ様その湧き水を溜めている貯水池に向かった。 「ルルカタの変異種の毒にしては効果が薄い。そして村人全員に症状が出ているということは、村の全員が口にする水に毒が溶け出しているということか・・・あった!」 貯水池の周囲を手分けして探すと、すぐに探していたものは見つかった。 パッと見では珍しくもないルルカタの花。しかしよく見ると通常だと真っ白なはずの花弁が中央部分に向けて青みがかっている。それはまさにノエルが昔読んだという文献に書かれていたルルカタの変異種の特徴であった。 見つけたルルカタは摘み取りコノハが持ち帰って毒の研究をすることにした。花の生えていた周囲の土にも毒が染み込んでいると考え、穴を掘って土を撤去する。 そして根から毒が漏れ広がったと思われる貯水池の水は一度抜き、新しい水を溜め直す。それ程大きな池ではないので、一週間もすればまた湧き水が溜まる。それまでは少しだけ村から離れはするが、川があるのでどうにかなるだろう。 「それにしてもよく水に毒が溶け出しているとわかったな」 一通りの処理を終えたタイミングで感心した様子のコノハがルゥの元へやって来た。今日中に毒の処理が出来たのはルゥが原因が水場にあることに気づいたおかげである。 「やっぱ野生の勘ってやつか?村の異変にも初めに気付いたし、王宮までの往復といい凄い活躍だな!」 コノハに言われたように今日のルゥは大活躍であった。そして長距離を走り回ったルゥは朝も早かったため疲れたのか、若干顔に疲労の色が見える。 ・・・というよりも顔色が悪かった。 「大丈夫か?流石に疲れただろう」 「いや、毒が回ってきただけだ」 「・・・は?」 毒という言葉に周囲にいたもの達が一斉にルゥへと顔を向けた。 「ルゥ!お前ため池の水飲んだのか!?」 「・・・王都から全力疾走したから喉が乾いていたんだ」 コノハの問いにルゥは小声で気まずそうに答える。若干その頭にある耳がぺしゃりと垂れている様子から、言うと怒られると思っていたらしい。案の定ルゥが言い終わると同時にノエルに頭をしばかれていた。 どうやらルゥが水に毒が混ざっていることに気づいたのは、自身が水を飲んでその症状が出始めていたかららしい。 「そうならそうと早く言え馬鹿者!」 「・・・痛い」 怒声と共にもう一発頭を叩かれたルゥはノエルをじとりと見上げるが、ノエルの怒り顔にそっと視線を逸らした。 「何に毒が含まれているかもわからないのに安易に村のものを口に入れるな馬鹿猫」 「・・・虎だし」 確かに不注意であったかもしれないが、あまりにノエルが小さな子供を躾けるかように怒るため、ルゥは若干拗ね気味に口を尖らせる。しかし毒が効いてきて体がだるくなってきたため、大人しくノエルの説教を聞きながら薬の調合を待つ。 しかしノエルがここまで怒ったのには理由があった。ルゥは薬が効きにくいのだ。 「丁度いいからお前らも覚えておけ。ルーファスに薬を調合する機会があったら濃度を倍にするか倍の量を飲ませろ」 ルゥの場合、普段は今の人型でいるが獣化した虎の姿が本来のルゥだ。その体は3m近い巨体である為、通常人間に投薬する薬では効き目が薄い。ノエルは毎度ルゥに合わせた薬を調合しているので、今回も先程村人達に飲ませたものとは別の薬を用意する手間があったのだ。 ちなみに他の獣人達は人間と同じもので問題ない。彼らは半獣化するが体の質量に変化は差程ない為である。 「ったく、俺は医者だが獣医じゃないんだぞ」 普段怒られることが少ないルゥはノエルに怒られる若干しょんぼりしていた。

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