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伝わる想い

「・・・」 「どうしたんだルゥ」 「いや・・・」 ランドニアの外壁を超えたところで一行は足を速める。里までの道を整備したおかげで獣人の足で急げば一時間程で街と行き来出来るようになった。 その間ルゥがほとんど口を開かないことを不思議に思いレジが声をかけた。元々口数が多くは無いとはいえ、皆の会話には比較的入って普通に話すのに先程から何か考え事をしてるのか会話に入ってこない。 「最近俺、喋りすぎな気がして」 「ぶはっ、なんだそれ」 思いがけない返答にレジは吹き出した。確かに出会った当初より長文で話すようになった気はするが、喋りすぎということは確実に無い。 「今までは基本的にダグとしか話すことが無かったし、面倒な時は喋りすらしなかったから」 「おいこらルゥ!聞こえてるんだぞ!面倒ってなんだよ!!」 「⋯」 「返事しろよ!!」 ルゥの言葉に思わずダグが振り向いて会話に混ざるがルゥはあえて口を開かず、ニヤリと少しだけ口角を上げて笑う。 「ずっと一緒にいたんだもの、言葉にし無くても通じてたってことよ」 「そういうことだ」 「本当かよ⋯」 ファーネスの言う通り、物心つく前からダグに育てられ長年共に旅をしていたダグは、ルゥの考えていそうなことはなんとなくわかる。そして世話焼きな性格も相まってルゥの行動の先回りをして色々と世話してやっていたので、ルゥもそれに甘えていた。 「確かに飯屋に行ってもルゥの分の料理まで全部決めて一緒に注文したりしてるよな」 「まあルゥの好みは把握してるからな。今はレジ、お前さんがルゥの分も注文してやってるだろ」 「•••俺も基本が世話焼きだからなぁ」 つい無意識のうちに世話を焼き甘やかしてしまうのは性格なので仕方ない。ましてやそれが自分の可愛くて仕方ない恋人となれば、何でもしてやりたいと思ってしまうが、少々手を出し過ぎている自覚があるレジはダグの言葉に苦笑する。 しかしルゥも、言わば世話をされる側のプロだ。世話をされる事に慣れ過ぎて、今更自分のことは自分で、など言われても面倒で仕方ない。 「最近は色んな人に会うから、ちゃんと話さないといけない機会が多い」 獣人であることを公表したからには、人間との関わりの中で色々と言葉にしなくてはいけないことも多い。今回の舞踏会もそうだが、注目の的である獣人の王としてルゥにはそれなりに役目がある。しかも獣人と違い、人間相手では匂いなどで察してくれというのも難しい。 「それに、ナラマは話させるのが上手い」 「確かに。殿下は聞き上手なお人だからな」 耳に心地よい声とテンポ、表情で相手が話しやすい雰囲気を作る。ナラマと話していると気づけばいつも、普段以上に口を開いているので不思議だ。 そしてそれは他国の王達にも共通する所があるのか、エリックやレナード、テオドール達と話していてもルゥが話しやすいペースで話を振られる。今日は個人で話すことが多かったので余計にそう感じたのかもしれない。 「沢山喋ってきたからその分今静かだったのか」 「ん」 「いやいや、帳尻を合わせる必要ないだろ!」 「私達ともお喋りしましょ!?」 「ルゥの話ならいくらでも聞きたいんだよぉ〜!」 無理して話せとは言わないし、普段のルゥとの会話に不満も全くないが、そんな理由で黙っていたのかと思うとつい皆口々つっこまずにはいられない。 それからの里へ道中、皆がルゥを中心に話を振りいつもより更に賑やかな一行であった。 里に着くと、今回の舞踏会での他国の反応を気にしていた獣人達がルゥ達の帰りをソワソワして待っていた。皆を代表してなのか大戦の当事者であるカイオスとマルコと数人の獣人達がルゥ達に駆け寄ってきた。 報告はまだしていないというのに皆の表情が柔らかいのは、ルゥの気持ちが伝わっているからだろう。ルゥ達は皆に向けてグッと親指を立てた。 一瞬のキョトンとした表情の後、一斉に獣人達の歓喜の雄叫びが里周辺へと響き渡った。 「良かった!上手くいったんだな!」 「もぉ〜っ何そのポーズ!」 安堵の声と共に六人が同時に同じポーズをした姿がなんだか可笑しく、カイオスが笑いながらルゥの頭を労うようにくしゃっと撫でる。 「ルゥ考案よ」 「最高に癒されたぁ〜!」 サービスと言わんばかりにルゥが再度親指を立て更にウィンクまでしてみせた為、周囲に笑い声に溢れた。

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