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第4話
頬杖をつき、愉快そうに笑いながらも、目は笑っていない羽田。ああ、この顔もいいな、と見蕩れていたら。
答えに窮していると、コン、とつま先に何か当たった。羽田のつま先だった。早く答えろという催促だと受け取った手塚は慌てて詫びた。
「すみません。気持ち悪いですよね、同性からそんな目で見られたら」
小さくなる手塚に、羽田は笑って首を振った。
「そんなことないよ。男性であれ女性であれ、好意を寄せてもらえるのは光栄なことだよ」
つま先が、さっきよりも進んできて、手塚の脚の間に入ってきた。
「それに、僕も君のこと、狙ってるって言ったら……?」
つま先が、手塚の足首を捕らえて、脚を広げさせた。言葉と動作、両方から同時に混乱させられて、手塚はどうしたらいいかわからないが、その中に、確実に別の感情がむくむくと頭をもたげてきた。
「……ね、君はどっちがいいの?」
意味深に問うてくる羽田の瞳に欲情が映し出されているのは、手塚の都合のいい思い込みだろうか。
「……その綺麗な顔を、いやらしく歪ませたいです。腰が立たなくなるまでめちゃくちゃに抱き潰したいです」
いっぱいいっぱいのあまり、つい思わず思ったことそのままを口に出してしまった。手塚は青ざめたが、予想に反して羽田はさらに面白そうに声を上げて笑った。
「オッケー。自分がどうしたいかをはっきり伝えられるのはいいことだよ。タクシー呼ぶね」
オッケー? 何が? どういう意味で?
その笑顔にまた射貫かれながらもさらに困難している中、羽田は手際よくタクシーを呼び、会計を済ませていく。
「行くよ」
そう声を掛けられた頃には羽田はきちんとジャケットを着込み、席を立っていた。まだ何の仕度もできていないことに気づき、手塚は慌てて雑に上着を羽織った。
タクシーに乗せられ走ること十五分ほど、降ろされたのはいかにもなラブホテルの前。まごつく手塚に対してここでも羽田は躊躇なく、チェックインを済ませて手塚をエスコートした。かなり手慣れているな、と感じる。
「さてと、お手並み拝見といきますか」
「圧かけないでくださいよ……」
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