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第4話
あまりにも衝撃的な出来事だった。
あの可愛らしくて人懐っこそうな修介くん。こんな蕩けた声を出すんだ……。
動けずにいたら、修介くんではない低い声の持ち主が何か話している声が聞こえてきた。
何を話しているのかは聞き取れないので、ベランダの手すりに手をつき、身を乗り出した。
無意識に聞き取ろうとしてしまった自分にハッとする。
何をしているんだ僕は。
浅はかな自分に辟易していると
「あっ、だからぁ……やだってぇ……!」
もう一度修介くんの甘い声。
どうやら修介くんは相手に攻められて、いやいやをしているみたいだ。
僕は一瞬で状況を把握した。
昼間、彼と一緒にいた人物。
もしかして修介くん、昼間出会ったあのイケメン俳優とデキてる……⁈
僕は知ってはいけない秘密を不本意に知ってしまった。
あわあわと焦って顔が沸騰し始める。
いや、まさか修介くんも僕と同じように、男の人と付き合っていただなんて。
それに加えて相手は人気俳優。こんなスキャンダル、絶対に世間にバレてはいけないだろう。
……よし、聞かなかったことにしよう。
それが一番だ。今日僕は、修介くんと会っていないし、甘い嬌声も聞いていない。
改めて部屋の中に入ろうと踵を返すと、朝陽くんが窓を開けてすぐそこに立っていた。
「へぇ。修介もこんな甘ったるい声出すんだな」
「!」
「窓開いてんの気付いてないんだろうな。お隣さんが耀くんで助かったね」
「あ、朝陽くん……」
しまった。朝陽くんも気付いてしまったか。
朝陽くんも修介くんとはたまに喋る仲らしい。修介くんの方が学年は上なのに、朝陽くんは彼の名前を呼び捨て&タメ口だ。
どうしよう、この人が直接修介くんに何かを言い出したら。
相手が藤澤 景だってバレていないのは不幸中の幸いだけど。
僕は朝陽くんを部屋の中に押しこんで窓をきっちり閉めた。
「朝陽くん、今のは聞かなかったことにしよう」
「え、なんで? 喘ぎ声聞こえてたよって修介に教えてあげなくていいの?」
「そんなのしなくていいよ! こういうのはそっとしてあげるのが一番だよ」
「でも恥ずかしい思いすんのは修介だぜ? きちんと窓閉まってるか確認しろよって指摘してやらないと。耀くんだって、誰かに喘ぎ声が聞かれてたって分かったら恥ずかしいでしょ?」
それはそれで恥ずかしいけど。
気付いても、あえて触れないでほしい気もする。
いや、もともと僕はアンアン声を出す方ではないし、窓を閉め忘れるだなんてヘマはやらかさない。
そっくりそのまま伝えると、朝陽くんはどこか愉快そうに唇の端を持ち上げた。
「あ、そう。どんなことをされても、声なんて出さない自信があるんだな?」
は、と一拍置いた次の瞬間には体を反転させられ、窓の方を向かされた。
朝陽くんは背中側から手を回し、僕の両手首をいとも簡単に片手で拘束する。足を踏ん張って逃れようとするものの、びくともしない。
「何してるのっ?」
「耀くん、今日は立ったまましよっか?」
「はぁっ?」
朝陽くんに窓を開けられ、僕は口を戦慄かせる。
まさかそんな……いつもは少し配慮して窓から離れた場所に布団を敷いてするのに、こんな窓際で、しかもこんなに開いてたら声なんて絶対に……
やめるように懇願する前に、服の中に手を入れられた。
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