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「ほら〜、翼くん?言ってくれないとわかんないなあ」 と、耳元で囁かれる。 「うんぁっ」 思わず変な声がでてしまう。 「翼くんの弱いとこはっけーん!」 さらに透さんがにやつく。そんな透さんを恨めしく思う。 「で、なになに??」 「え、えっちなこと…」 と、必死に声を絞りだす。 「なにー?聞こえなーいもう1回言って?」 「うっ、透さんの意地悪!!もういいっす!帰ります!!」 立ち上がって帰ろうとすると 「ごめんって!!えっちなことね!!話すからまだ帰らないでえぇぇ」 と懇願されたので、仕方なくその場に留まる。 (まあ、俺も聞きたいしな…) ◽︎◽︎◽︎◽︎◽︎◽︎◽︎◽︎◽︎◽︎◽︎◽︎◽︎ 「俺の初めては今の翼くんと同じ年の時。ゲイってさ、身近にほんとにいないからマッチングアプリとかで探すしかなくて。そこで探して、会ってすぐヤるみたいな感じだった。」 「俺と同い年っすか…」 「そう。普通に興味本位ってのもあったし性欲がありあまってたからねー。あの頃はわりと遊んじゃってたなー、ワンナイトとか多かったし…」 「わ、ワンナイト…」 オトナな世界だ…と思っていると 「翼くんはさ、抱きたい方?抱かれたい方?」 「なっ、なんすか!急に!」 身の危険を感じ、身構える。 「いや、普通に!反応的に経験はないんだろうけど願望みたいなのないの?幼馴染くんに抱かれたいの?それとも抱きたいの?」 「うっ。それは…多分抱かれたいの方だと思います…」 (は、恥ずかしい…) 「やっぱりそうなんだ〜」 意外と軽い反応に拍子抜けする。 「透さんは…どっちなんすか?」 単純に気になって聞いてみる。 「俺は、ネコタチどっちもいける派。両刀なんだ〜」 「ちなみに翼くんだったら、タチかな!」 と、キラキラした顔で言われ反応に困る。 「いや!聞いてませんから!!」 「ふふっそっか、ネコかぁ〜。ネコは準備とか大変だよ〜?」 「準備?」 「そう!ほんとに翼くんなんも知らないんだねぇ、よし!お兄さんが片っ端から教えてあげよう!!」 そして4時間に渡る「太宰透の性教育講座」が始まるのだった。 ◽︎◽︎◽︎◽︎◽︎◽︎◽︎◽︎◽︎◽︎ そして、透さんの長い長い性教育講座が終わった。 「そ、そんな大変なんすね…男同士って」 「そうだよ〜、特にネコちゃんの初めては次の日覚悟しときなね!!」 まじか〜と思いつつ、時計を見ると10時を過ぎていた。 「やっば!!母親が帰ってくる時間なんでそろそろ失礼します…!」 「えっ!それは帰らなきゃだあ!思わず楽しくなっちゃって喋りすぎちゃったなあ、ごめんね。」 「いやこちらこそ!めっちゃ勉強になりました!楽しかったす!」 「お弁当もさ、ほんとに美味しかったんだ。心こもっててさ、幼馴染くん愛されてるなぁって思ったよ。」 と、微笑んで言ってくれる透さん。 「あの、また来ていいすか… 透さんすげえ話しやすくて。俺、めっちゃへこんでたはずなのに元気出ました。弁当も!もし良ければ毎日作りますよ!」 自分でも驚いていた。初対面でこれだけ打ち解けられるなんて。この繋がりは切りたくないと思ったのだ。 「遊びにくるぶんには全然構わないよ。俺も楽しかったしまた相談しにおいで〜!弁当も、ほんとに翼くんがいいならお願いしようかな…」 と、少し照れながらいう透さんはとても微笑ましかった。 「やった!じゃあまた明日の朝渡しに行きます!」 そう笑顔でいうと、 「あ、じゃあこれお礼ね」 と言って透さんは俺のほっぺたにキスをした。 「なっなにするんすかぁぁあぁ」 キスされた頬を抑えて、真っ赤になりながら叫ぶと 「あっは!!翼くんほんとにスキだらけなんだもん。ほかの男に気をつけなきゃダメだよ♡ ほらっお母さん帰ってきちゃうんでしょ。」 と、笑いながら背中を押される。 そういって透さんとは別れた。新しい出会いと目的が出来たことに俺は戸惑いつつも、胸はドキドキしていた。

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