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5.5
透視点
「ぷっぷぷぷっ…」
さっきの「彼」の顔を思い出すとまた笑いがこみ上げてくる。
彼がドアから出てきた時、仲良く話している俺と翼くんをみて、明らかに俺を不審がっていることがわかった。
彼が翼くんのことをどう思っているのか気になり、少しからかってみたくなった。
「じゃあ俺はそろそろ行くね〜、あっ翼くん今日もおいでね♡ 待ってるよ。」
といって、翼くんの弱点の耳に息を吹きかけた。
「んぁっ」
案の定、翼くんはかわいい声が出る。
(かあわいいなあ)
そう思いながら、彼の方を向く。
彼は、戸惑ったようななんとも言えない顔をしていた。
(まあそうだよねえ、いくら君でも翼くんのこんな無防備な声聞いたことないでしょ。)
でもすぐその後、翼くんを彼が自分の方へ引き寄せた。
(お〜う、こっわ…)
さっきまでの爽やかな少年はどこに行ったのか。
そこにいるのは眉間にシワを寄せるほどに険しい顔をした男だった。
(ふ〜ん。脈なしじゃないってことね。)
と、俺は余裕の笑みをみせながら
「はははっ!じゃあ翼くんも真野くんもまたね〜」
と笑いながらその場を去った。
翼くんの話を聞いていると、全くの脈なしに思えたがさっきの反応をみると、翼くんになんらかの執着心みたいなものがあるように見えた。
(まあ多分本人もそれにすら気づいてないだろうからねえ、俺にもそれが恋愛としてなのか、幼馴染としてなのかまではわからないし。)
この前、泣き腫らした翼くんをみてなぜだか放っておけなかった。翼くんはいいこだ。健気だし、かわいいし、すぐ相手を信用してしまう。ほんとは初めて家に入れた日、下心ありありで弱っているところにつけこんで襲ってやるつもりだった。
でもあまりにも無防備で警戒心のなさに、襲う気すらなくなってしまった。むしろ、応援してあげたくなった。
(まあでも、耳いじめた時の翼くんの声はまーじでやばいけどね、かなりムラっとくる。)
耳だけであんな声出してしまうなんて、もっと深いところまでいじめたらどうなるんだろうか…
(嫌われたくないから今すぐ手は出さないけどさ。)
そう。いますぐは。
翼くんはとても流されやすい子だ。俺みたいに信用しているやつだったら、多分すぐに体を許してしまう。
だから
(早くしないと翼くん貰っちゃうからね?王子様。)
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