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「翼おはよっ!!」
「おう、おはよ。」
約束の日曜日がやってきた。これまでにあったことといえば、なんとなく聖夜と透さんの相性が悪いことがわかったので、透さんに弁当を渡す時間を早めて、聖夜が起きてくる時間とずらすことにした。これは意外にも透さんが提案してくれたことで、聖夜が俺との時間を作ってくれたことが嬉しかったこともあり、透さんには申し訳なかったがその提案を受けることにした。本当にいい人だ。
(あんないい人なのになんで聖夜は気に入らないんだろうな?)
と不思議に思いながらも
「じゃあ映画館行くか。」
と聖夜にいう。
「おうっ!」
2人で歩き出した。
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映画館につき、ポップコーンを買って席につく。
もちろん席は隣だ。
「いやー映画楽しみだな!俺ずっとみたかったんだよー」
「俺も気になってたけどお前は優里ちゃんと見るもんだと思ってたよ。」
「アクション映画はやっぱダチとみたいんだよなあ、女の子ってこういうのあんま好きじゃなさそうだし。」
「まぁ確かにな… 」
最近は、優里ちゃんの話題になってもあまり気にならなくなってきた。
(慣れって怖いな。)
「へへっ、翼と遊ぶなんていつぶりだ?俺、今日めっちゃ楽しみで昨日は眠れなかったぜ。」
そう無邪気に言ってくる聖夜。
「ね、眠れなかったって小学生かよ!」
と、つい突っ込んでしまう。
「翼は?楽しみじゃなかった?」
心配そうな顔をしてくる聖夜に
「俺も… 楽しみにしてたよ…」
恥ずかしくて、最後の方は声が消えかかってしまった。
すると、聖夜は安心したような笑顔でわらうのだった。
映画が始まり周りが静かになる。
みんなが映画に見入っている中、俺は昨日の夜の透さんとの会話を思い出していた。
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「いい?翼くん!映画館は距離が縮まる大チャンスです!!」
「は、はい…!」
「俺が、幼馴染くんとくっつけるようなテクを教えてあげるからしっかり実行するんだよ!」
そのテクというのは、割とありきたりなもので、俺が寝た振りをして聖夜の肩にもたれかかるというものだった。
「そ、そんなん無理っすよ!!てか、映画普通に見たいっす!!」
「そんな甘ったれたこと言ってる場合じゃないの!映画なら俺が今度一緒に見に行ってあげるから!翼くんは幼馴染くんとひっつきたくないの?!」
何気にデートの約束をさせられた気がしたがそれはまあ置いといて。
「いや、ひっつきたいっすけど… 」
「でしょ?!じゃあ行動あるのみだよ。」
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そして時は戻り、映画館。
(寝た振りってどうすればいいんだ?!とりあえず目をつぶるか?)
頭の中にあの時の透さんの声が響く。
「いい?まず目をつぶってそのままの体勢で5分くらい!」
(ふむふむ。まずは5分だな…)
言われた通り、そのまま動かず目をつぶる。
「5分経ったなと思ったらそのままゆっくり!ゆっくり頭を傾ける!」
(よし。ゆっくりだな。ゆーっくり…)
そう頭を聖夜の方に傾けようとした瞬間。
頭に叩かれたような衝撃が走る。
「うっ!」
思わず変な声が出る。
目を開けると聖夜がこちらを向いていて
「おい。ばか。何寝てんだよ… いますげえいいとこだぞ…」
と、ひそひそ声で言われる。
頭をはたいたのは聖夜だったようだ。
「わ、わりい、さんきゅ…」
と俺は必死に取り繕ったが内心とても恥ずかしくてどうにかなりそうだった。
(透さぁぁあん、聖夜にはそんな手通じませんでした………)
その後俺は真面目に映画をみて
大号泣するのだった。
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「うぅ、ひっく、ぐぅぅ」
「翼は、大体泣くよなー映画見ると。泣き虫なとこは変わってねえな相変わらず。」
と、俺の泣き顔を見て言ってくる。
「だってよぉ、うっ、あんな所でぇシリンダーが死ぬとはっ思わないだろおお…」
「はいはい。シリンダーなぁー」
子供もをあやすように背中をさすってくる聖夜に腹が立ってくる。
「子供扱いすんなっ!!」
「ごめんごめんってー」
と、少しも悪いと思ってなさそうな顔で笑ってくる。
そんな聖夜をみて睨みながら俺は言うのだった。
「お前…少しも悪いとおもってねえだろ…」
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俺が落ち着いてきたところで、昼食を食べることになり近くのカフェに入る。
「まあでも、面白かったよなあ、起きといてよかっただろ??」
「あぁ、起こしてくれてさんきゅな。いいもの見逃すとこだった。」
まあ実際には、狸寝入りだったのだが…
「さっきも言ったけどさ、俺今日翼と遊ぶのほんとに楽しみにしてたんだ。でもちょっと不安もあってさ」
寂しそうな顔して聖夜が言う。
「不安?なんでだ?」
「…最近翼さ、俺といる時元気なかった気がして、俺なんかしたかなってずっと心配してたんだ。でも、さっき翼も、楽しみにしてたって言ってくれてまじで安心した!」
そう聖夜にいわれて気づく。確かに最近は聖夜が優里ちゃんの話ばかりだったので、あまり聞きたくなくて不機嫌そうな顔をしていたかもしれない。そういう風に思わせていたことを申し訳なく思う。
「ごめん…そんなつもりなかった… でも確かに元気はなかったかも。ちょっと悩んでて。」
「ねえ、それ前も言ってたよね?翼は何に悩んでるの?俺、なんでも相談乗るよ?」
「えっと…それは…」
と、返答に困っていると聖夜の顔がさらに曇る。
「俺って、そんなに頼り…ないかな?これでも翼の1番の親友だって思ってるし、何があっても絶対に俺は翼の味方だよ?」
(そう、だよな。聖夜にとったら俺ってわけわかんないよな。)
「………」
何も言えなくなって、聖夜から目をそらしてしまう。
「その悩み、きっと太宰さんって人には話してるんでしょ?もしかして、俺に言えないことなの?」
聖夜はさらに言及してくる。
「うん…ごめん… 言えない……」
顔を逸らしたまま答える。
(本人に、好きだから悩んでるなんていえるわけがない…)
ふいにどんな表情をしているか気になりそっと聖夜の方を向くと
「そっか… そうだよな!!!いくら幼馴染だからって言えないことくらいあるよな!ごめん!しつこく聞いて。」
笑顔で聖夜はそういった。でも俺は見逃さなかった。
聖夜が一瞬ものすごく傷ついた顔をしていたことを。
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