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その後は、何事もなかったかのように時間を過ごした。
聖夜も笑っていたし、俺も心から楽しんだ。
でも、聖夜にあんな顔をさせてしまった罪悪感は消えないままだった。
「じゃあ、夜ご飯も食べていくか?」
聖夜がいう。俺はなんとかさっきのお詫びができないものかと考えて
「そうだな。俺が奢るよ。」
と言った。
「もしかして、さっきのやつ気にしてる?俺は大丈夫だから気にすんなって!幼馴染にだって言えないことあるだろ?だからいいの。気にすんな。」
そう言ってくれる聖夜。だが、俺は頭からあの聖夜の表情が離れてくれない。
「だめだ、俺が気にするんだ…」
頑なに奢ろうとする俺をみて、聖夜は、はあーと深く息を吐いた。
「わかったよ、翼がそこまで言うなら。でも奢りはなし。お前の飯が食いたい。」
それを聞いて、ばっと顔を上げると、そこには俺の大好きな笑顔で笑う聖夜がいた。
「言っただろ?俺は、お前の作る料理が1番好きなんだって。」
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俺の家につき、聖夜を招き入れる。
「なんか翼んち、久しぶりだなー。おばさんは?」
「母さんはまだ仕事だよ。そっちは?」
「うちも仕事。今はもう慣れたけどさ、小学生の時とか翼いなかったらやばかったなー。絶対ぐれてた。」
そう笑いながらいう聖夜。
「いやお前はぐれないだろ。結構優等生してたじゃん。」
「いや?翼がいなかったら寂しすぎて多分だめになってたよ。俺、意外と寂しがりやだからさ。」
「うん… 知ってるよ。」
「だよな。だから弁当も作ってくれてたんだろ?」
「……… まあ…な。」
まさかバレていたとは。
「俺、意外と翼のことわかってんだぜ?俺に結構冷たく接してくるけどさ、それも長い付き合いで素直になれなくなっちゃってんだろ!実は俺のこと大好きなくせに。」
「はっ?!なわけないだろ!!」
「大好き」という言葉に過剰に反応して大声を出してしまう。
「ほらほら、そーゆーとこ!嘘だって分かってるけどさ、そんなに否定されたら流石に俺も傷つく…」
しゅんとする聖夜に
「わ、悪い!!聖夜の言う通りだよ… 俺、お前の前だと素直になれない… でもお前のこと嫌いになるなんて絶対にないから!!」
と、必死に否定する。
「絶対?」
「絶対!!!」
必死に縦に首を振る。
「じゃあ、俺のこと好き?」
と、聖夜が聞いてくる。
俺は勢いでそのまま頷いてしまった。
「……?」
(今俺、とんでもないこと聞かれなかったか?)
「へえ、好きなんだあ…」
顔を上げると、さっきの表情が嘘だったかのようににやにやしている聖夜がいた。
俺はとんでもないことに頷いてしまったことにきがついた。
「あ、お前!はめたな?!」
「あはははははははっっっ!!翼、顔真っ赤!!あはははは!!」
俺の顔は真っ赤に染まっていたらしくそれを見て爆笑している聖夜にとてつもなく腹がたった。
(なんだよっ、お前のこと好きってそんなおかしいことかよ…)
聖夜の思っている「好き」の意味が違うことがわかっていても、笑われたことは俺にとって、結構ショックなことだった。
「そんな、笑うことないだろっ……」
明らかに不機嫌になった俺に聖夜は慌てる。
「ご、ごめんってええ、そんな傷ついた顔するなよ。」
久しぶりに見る聖夜の慌てぶりにざまあみろと俺は思った。
「翼っ!仲直り!仲直りしよ?」
と、手を引かれて聖夜の正面に正座させられる。
「なんだよ…」
「ほら、小さい頃よくやったじゃん。おでこくっつけて… 本音言い合うやつ。」
「はあ?!恥ずすぎんだろあんなの!」
それは、俺と聖夜が小学校低学年の時に、発案した仲直りの方法で、やり方は、まずお互いのおでこをひっつける。そのまま、何が嫌だったのかを隠さずお互い言ってすっきりしたら、2人同時に頭突きをするという今思うとあまりにも意味のわからない仲直り方法だった。
(それを中学生までやってたんだもんなあ… 俺が気持ち自覚してから流石におかしいって気づいてやめたけど。)
「ね?翼。久しぶりにやろうよ。お願いっ!!」
聖夜は本気でやるつもりだ。俺は本気で聖夜に頼み事をされると断れない。惚れた弱みってやつだ。
「はあ。わかったよ…」
俺はしぶしぶ承諾した。
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