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お互いの頭に手を当てて、おでこをくっつける。久しぶりにやったが、あまりにも聖夜との距離が近すぎて心臓がどくどくとうるさい。 (くそ距離ちけえ…… こんなん心臓もたねえよ…) 救いなのはお互いに目をつぶらなきゃいけない事だ。 「翼、俺から言うね…?」 「おう…」 「俺、翼がおもってるより翼のこと好きだよ。太宰さんと仲良さそうにしてるとこみてヤキモチやくくらいには。だから、さっき意地悪しちゃった…ごめんね? 翼が悩んでること、俺にはわからないけどさ、翼ならきっと大丈夫だよ。あと翼は泣き虫のくせに、よく溜め込んじゃうから心配なんだよなあ。限界になったらいつでも言えよ?胸くらいなら貸せるからさ。」 聞いたことがないくらい優しい声でそう言ってくれる聖夜。その言葉に目頭が熱くなる。 「はい。次は翼だよ。」 (俺も、素直にならなきゃな…) 聖夜の言葉に俺も誠心誠意答えなきゃいけないと思った。 「…俺も優里ちゃんに嫉妬してた… ずっと一緒にいたのに、突然聖夜がいなくなった感じして寂しかった。応援しなきゃいけないのにそんな自分が嫌で仕方なかった。だから、聖夜からしたら嫌な感じだったと思う…ごめん。今悩んでることもいつか言うから… 待っててほしい。」 途中で目に涙がたまり抑えきれず溢れてきた。 「ひっぐ、うぅっ」 「も〜、本日2回目だよ翼。」 と笑ってくる聖夜。そっと目を開けると、聖夜は俺の予想と違う表情をしていた。 「おまえも泣いてんじゃん…」 「うっさいなー、がちで嫌われたと思ってめっちゃへこんだんだからね?俺!」 「悪かったって!」 (てか、この距離やばいって!!さっきまでは目つぶってたから良かったけどこの距離で見つめられるの いろんな意味でつらいっ!) 当たっているおでこから、顔が火照っていくのがわかる。 「なんか翼、顔熱くない?」 「はっ?気のせいだよ!!あ、頭突きしなゃだろ頭突き!」 と、誤魔化そうとすると 「ええ、頭突きとか痛いじゃん…」 「でも、いつもして終わらせてただろ…」 「えーー?てか翼、耳まで真っ赤だよ」 翼が笑って俺の耳をさすってきた。 「ちょ、せいやぁんっ」 耳が弱い俺は案の定気持ち悪い声が出てしまい、思わず口を抑える。 (あ、やべっ… ) 最近は、透さんによくいじられていたため前より敏感になってしまっていたのだった。 「...わりい、なんかキモい声でちまった。」 恥ずかしすぎて、穴があったら入りたい気分だ。   (こんな声聞いたら、流石の聖夜も引くよな…) そう思ってると、今度は両耳同時にいじられる。 「んんぁんっ」 (な、なんか触り方がエロいんだがっ?!) 「翼、耳弱いんだ…?」 「え、あ、えっと…」 そう言う聖夜がどんな顔しているのか俺は怖くて見れなかった。 (やっぱり引かれたか?!) 「そういえばあの時も───」 声が小さく、最後まで聞き取ることができなくて 「ごめん、いまなんて?」 と聞き返そうとすると 、 「んんぁっ」 また耳の裏を擦られる。 「ちょっ?!せいやぁ?」 腕を掴んで止めさせようとすると、そのまま押し倒される。 「おい!せーや?!どうしたんだよ!」 抵抗しようとしても、聖夜の力が思ったよりも強くて身動きが取れない。聖夜の表情も見えなくて、こいつが今、何を考えてるのか分からないし、怖くて視界が歪む。 「せぇやっ、どうしたんだよ、こわいよっ」 と、必死の思いでうったえると聖夜は、はっと目を見開き、俺の腕を掴んでいた手の力を緩めた。 「ご、ごめん!まじでごめんっ…俺どうかしてた…」 聖夜自身も、自分がどうしてこんな行動したのかわかってないようだった。 「いや、いいよ… お、お前、たぶん俺のこと優里ちゃん間違えてたんだろ!しょうがねえやつだな、もうしてくんなよ!変態魔人め!」 どうやったら俺と優里ちゃんを間違えるんだと思いつつも、そう思わなきゃ変な期待をしてしまいそうだった。 「そ、そうだよな… 怖がらせてほんとごめん。俺、もう帰るな…」 いつもと違う聖夜の様子に調子が狂う。 「…まあ疲れてたんじゃね?俺は、ほんとに大丈夫だからさ気にすんなよ。」 「うん… ありがとう、じゃあまた明日な…」 聖夜は相当思いつめたような顔をして、帰っていった。 (あいつ、大丈夫か…) ◽︎◽︎◽︎◽︎◽︎◽︎◽︎◽︎◽︎◽︎◽︎◽︎◽︎ 自分の部屋に戻ると、そのままベッドに倒れこんだ。 「び、びっくりした… 」 俺の心臓はさっきからずっとうるさいくらいに鳴っていた。確かに、押し倒された時は怖かったけれど、それと同時に、これからなにをされるか期待している自分もいたのだ。 (期待すんな。期待すんな。期待すんな…) 自分の頭の中で呪文のようにその言葉を思い浮かべる。 (深い意味なんてない。ただあいつが欲求不満だっただけだ。) 頭に、押し倒された時に一瞬見えた「雄」の顔がチラつく。 (忘れろ… 忘れろ…) そう思っていると プルルルルルルルルル 携帯の音が鳴った。携帯を見るとそこには「太宰透」 と表示されていた。 (透さん…) 「…もしもし?」 「あ、翼くん?どうだった?俺が教えたテクちゃんと実行した〜?」 能天気に話す透さんの声に、俺は少しだけ安心した。 「いや、透さんのテクは聖夜には通じませんでしたよ…」 「えー?そっかあ、ざんねーん。」 「手強かったっす。」 「…翼くんなんかあった?」 「…!」 「なんか声が暗いよ?」 「透さん、鋭すぎるんすよ… 」 「ふふっ、よく言われる〜」 「また、水曜日くらいにお邪魔してもいいっすか…」 「うん。もちろん!待ってるね。」 「はい…」 そう言って電話を切る。なんでもお見通しの透さんに は、頭が上がらない。少しだけ気分が軽くなった。

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