7 / 322
第7話
…男同志だし。
…中黒が勝手に絡んできただけだし。
脳内で言い訳する俺。
「香束、手が留守だぞ」
「あ…すみません」
パソコンに向かって一向に動かない俺に気が付いた佐藤リーダーが向かいの席から声を掛けてきた。
隣で作業している四年先輩の中野さんは“ しょうがないな”というような同情の目で俺を見ている。
朝、同期に絡まれてる所を涼真に見られて、それだけで気持ちがソワソワして落ち着かない。
「はー…すみません」
「まだ帰って来て一週間?疲れた?」
「いや、そんなんじゃないんで大丈夫です」
「無理はするなよ」
「ありがとうございます」
俺は新入社員として働きだして三ヶ月経った頃、何故かアメリカにある関連会社に出向となり約一年半現地で地獄の様な日々を送った。
最初は何で俺が!と思ったが、ちょうどヤケクソになっていた時期だったのである意味渡りに船ではあった。
アメリカでの生活は…今となっては太平洋に沈めたい思い出だ…。
「コホン…」
「はは…」
静かに咳払いをする佐藤さん。
再び動かなくなった俺を佐藤さんは気にかけてくれているようだが、涼真の事が頭から離れず正直仕事が手に付かなかった。
「こんなんじゃダメだよな…」
両手でパン、と顔を叩いて俺は仕事に没頭すべく取りかかった。
ともだちにシェアしよう!