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第9話
「東藤…?何かあった…?」
「あ…、ないない!気のせいだったわ!ほら、早く食わねーと時間無くなる!」
唐揚げを口に突っ込んでほっぺたを膨らます中黒はわざと俺と会話出来ないようにしている。
…気になる…でもその事についてもう中黒はしらを切り続けるだろう。
目の前の男の表情を追いながら油揚げを咀嚼した。
中途半端な情報が俺を不安にさせる。
時計を見れば終業時間まであと一時間。
…あ〜あ、気になって仕事に身が入らない…ちょっと気が引けるけど…奥の手を使うか…?
俺はちらっと佐藤さんを見た。
「ん?香束、どうした?」
「あの…体調がすぐれないようなので少し早く退勤してもいいでしょうか…」
うなだれ感を出しつつ、下から見上げるように…。
「風邪か?ひきはじめが肝心って言うし明日もあるからな。後少しだからもう帰っていいぞ」
「…すみません。ありがとうございます」
…よっしゃぁぁ!
顔とは真逆のガッツポーズを心の中で掲げ、俺はそそくさと会社を出た。
涼真の家の玄関前で待つのが確実なのは分かってる。
でも近所の目があるし、何より涼真に話が出来ないほど嫌われたくない。
考えた末、あのスーパーの惣菜コーナーにまたもや身を潜めた。
涼真は家事が得意じゃない。
だから毎日に近い形でここに来るはず!
周囲の痛い視線には気付かない体で俺は涼真を待った。
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