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第10話
「涼真遅いな…」
二時間ほど過ぎた頃、俺は…ふと我に返ってしまった。
退勤して保育園にお迎えしてからのスーパー(仮定)。
俺は定時で退勤してから来ても間に合う計算じゃん!
だが過ぎてしまった時間は戻らない。
とにかく涼真を逃がさないように、俺はじっと身構えていた。
「うっ…ひっく…ぱぁぱぁ…あぁん〜」
まあまあのボリュームで泣く子供。
あれは涼真の子供だ。
昨日と同じように涼真に抱っこされているが、今日は涼真のスーツに顔を埋めてグズグズと泣いていた。
「もう勘弁してくれよ、真咲」
相変わらず大きなバッグを下げて子供をあやす様に体を揺らしながらカートを押している。
「今日はどうしてそんなに機嫌が悪いんだ?パパに教えてくれよ」
「うぇ…ふぁぁぁん…」
もちろんまともな答えは帰ってこない。
「ぱぁぱ…あ〜ん…うぇぇぇぇ〜」
「うわ…本格的にきた…」
涼真は上を向き、カートから離した手で顔を覆った。
…大分参ってんな…
…あ〜どうしよう…ええい!
見ていられず、涼真の眼の前に飛び出してカートの持ち手を掴んだ。
「ほら、買い物!カート押すから早く品物入れろよ」
「郁弥…どうして…」
「ちびっ子がぐずってんだろ?早く買い物済ませて店出ようぜ」
「う…うん…」
どさくさに紛れて一緒に買い物を済ませた後、俺達は涼真が住むマンションへと向かった。
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