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第12話

「悪いな…手伝ってもらって…」 「そんなのは…いいんだ」 ローテーブルを挟んで向かい合って座る俺と涼真。 二人きり、話したいことは山ほどあるのにきっかけが掴めなくてお互い黙(だんま)りとしてしまう。 「あの…さ、頼れよ。俺達幼馴染みだろ?迷惑掛けてくれよ」 「…でも…」 正座して座っている涼真はテーブルの上で両手を握り締めていた。 「俺は…涼真の力になりたいんだ」 「郁弥…。でも俺…一人で育てるって…」 「涼真…お前、未だに家事苦手なんだな」 「……うん…」 「でも、頑張ってるって分かる。だから…」 涼真の手を両手で包み込む。 緊張しているせいか、その手は冷たい。 「…だから、俺にも手伝わせてくれ。頼むよ」 「…郁弥、…でも…俺…」 涼真の瞳が揺れる。 何を迷う事があるのだろう。 俺を頼ればいい。 俺だけを。 「涼…」 その時、俺の声を遮る泣き声が聞こえた。 「あ…真咲が泣いてる!悪い…」 素早く立ち上がり、泣き声のほうに涼真は向かう。 …たった一人で…よくやってる… 名刺を取り出して裏に“ 真夜中でも連絡OK ”と一言書き机に置いた。 もちろんプライベートの連絡先も忘れていない。 涼真と子供の生活を邪魔したくはないんだ。 ただ涼真に笑っていて欲しい。 …今日は帰ろう… 声もかけずに部屋を出た。 この気持ちは押し付けの親切心なんかじゃない。 俺は…涼真の事を… 玄関扉を、そっと閉めた。

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