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第18話

小学校高学年の頃、涼真の隣の家に子供のいる家族が越して来ると大人達が話していた。 俺は新しい友達が来るという好奇心と同時に、涼真を取られるんじゃないかという恐怖を感じた。 そして、ある日やってきたその子供は…女の子だった。 咲百合(さゆり)と名乗ったその子は大きな目が印象的で顔の造形が整った可愛らしい子供だった。 少し気の強い所は苦手だったが頭が良く本の虫と言えるほどの読書家で小学校を卒業するまでに図書室の本を全部読んだと言っていた。 咲百合は俺よりも涼真の方がウマが合うらしく、よく二人で図書室にいる姿を見かけた。 中学校に進学すると、俺と涼真はウチで晩飯を食べる以外一緒にいる時間がどんどん減っていった。 その代わりに涼真は下校時間になるまで学校で咲百合と過ごし、誰が言い出したのか二人は付き合っているという噂まで流れだした。 あ〜…あの時は辛かったなぁ…。 昨日、ちょっと涼真と一緒に居ただけで心の底に封印していた過去の記憶が甦った。 「はぁ…」 パソコンのモニターの向こう側から、いるはずの無い過去の自分が俺を見てる。 その表情は俺をせせら笑っているようだ。 『あの時逃げたツケが回ってきたんだ』 そう言ってあいつは姿を消した。 「そんな事…!」 思わず声が出た。 「どうかしたか?まだ顔色が良くないな」 佐藤さんは俺の体調が良くないと思っていて、ちょっとした俺の仕草も見逃さない。 「はあ…どうにもしんどくて…」 咄嗟に出た言葉は曖昧で…けれど意外と今の俺の核心を捉えた言い方だった。

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