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第20話

「…悪かったな…」 常夜灯の明かりが涼真と真咲の顔を静かに照らしていた。 「何が?」 「えっと…真咲が郁弥から離れなくて…一緒にお風呂に入るとか突然泊まれとか…」 「ハンバーグで胃袋掴んだな」 おどけてみたが涼真の表情は硬い。 俺はそ知らぬ顔をして涼真の言葉をやり過ごそうとした。 「分かってるんだ。これじゃダメだって…」 自分を否定する涼真。 「こんなんじゃいつかダメになる。俺も真咲も…でも…」 仄暗い蛍光灯の下でも涼真の目元が光っているのが見えて、俺は胸が痛かった。 「例えエゴだと言われても…真咲を…離したくない…」 「親には頼れないの?」 「…うん…」 「そっか…」 暫し沈黙の時間が流れ、俺は涼真にこう切り出した。 「俺さ…結構家事が得意なんだよ。でも一人だからさ、食べてくれる人なんていないし料理なんてほとんどしないんだ。姉ちゃんには家族がいるから俺の入る隙間なんて無いし…」 言い淀んで涼真の様子を盗み見る。 「…だから作ってやるよ」 「…でも、…そんなに甘えられない。俺は郁弥の両親に育ててもらって、子供は郁弥に…」 涙声が細く消える。 「俺、姉ちゃんと歳が離れててほぼ一人っ子だったからさ、涼真が兄弟みたいなモンだってずっと思ってた」 不安げな涼真の目に、俺はどんな風に映っているのだろうか。 「頼ってよ。真咲だって可愛いし、俺に懐いてくれてる。俺と家族ごっこしてみないか?」 涼真は黙っていた。 でもそれは拒否ではなく、迷ってるだけなのだと俺は思いたかった。 だからもう一押し。 「俺の家事の腕前、みせてやるよ」 ほら、俺を頼って。 そしてどうか俺無しでは生きられなくなって。

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