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第26話

「きゃーッ!ぱぁぱ〜」 猫のぬいぐるみを振り回してはしゃぐ真咲。 家の中がダンボール箱だらけでまだ二歳にもならない真咲にとってはちょっとしたアトラクションに見えるのかも。 「危ないから!こっちにおいで…っうわあ!」 「よっと!」 真咲に気を取られて壁にぶつかる涼真。 大丈夫、俺が壁から跳ね返った涼真をキャッチした。 涼真と食費を折半にするかどうかで揉めてから約二週間で(俺)念願の引越しにこぎ着けた。 大人と子供一人づつの荷物は想像したよりも少なかった。 収納スペースガラガラだったしな。 「郁弥、真咲が気になって…集中できない…」 「もうすぐ助っ人が来るから」 「え?誰?」 「郁弥〜、涼真〜来たわよ!」 玄関からよく通る声。 「あ〜!」 「真咲がお出迎え?嬉しい」 そう言って優羽は真咲を抱き上げた。 「待ってた、姉ちゃんありがと!」 「ウチの息子が遊び相手になるから。さ、行きましょ」 「優羽さん、ありがとうございます!お宅までご一緒します。真咲、お兄ちゃんと遊ぼうな」 「にー?」 「そうだよ。郁弥、ちょっと抜ける」 「おう!」 真咲が優羽の所にいてくれれば俺達は安心して荷物を運べる。 助っ人呼んで正解だった! 「さーて、この辺のダン箱から運ぶか」 三人を見送り、ちょっと小さめの箱を二つ重ねて持ち上げた。 「楽勝〜…うわ…!痛っ!」 足の裏にグニャリとした感覚、そして痛み。 次の瞬間には床をズルっと滑り上に乗せていた箱がすっ飛んで床に強制着地した。 「あ〜…中身が…ん?」 ゆるりと貼ってあったガムテープが捲れてフタの隙間から衣服がはみ出ていた。

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