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第28話

「真咲、いい子にしてたか?」 「ぱぁぱ〜!きゃ〜!」 とりあえず荷物の移動を終え、手配していた数人の業者を返してからの真咲のお迎え。 「いく〜だっこ〜」 「はいはい、なっちゃん」 真咲より一歳と少しお兄ちゃんの夏羽(なつは)が目ざとく俺をみつけ抱っこを所望する。 優羽の溺愛する長男。 おっとりした所は旦那さんにそっくりだが、顔立ちは優羽に似ている。 「まーくんとあしょんだの」 「うん、ありがとう」 正面から首に手を回され、舌っ足らずな物言いで報告してくれる。 「郁弥も涼真もお疲れ様。真咲と夏羽がずっとイチャイチャしてて可愛いかった〜!」 「ご迷惑お掛けしてすみません」 「近所なんだからいつでも歓迎するわよ」 「なっちゃんまーくんとあしょぶー!」 「きゃーあ!なんなん!」 さすが子供。 既に仲良しか! 「姉ちゃんありがと!帰るわ」 ほっとくと涼真と姉ちゃんがずっと喋っていそうで俺が勝手に帰る宣言した。 「真咲、今日からここに住むんだよ」 不思議そうな顔をして玄関に立つ真咲。 「俺とパパと真咲と三人で、な」 部屋の中から呼びかけると真咲の目がキラっと光った。 「とと?」 「郁弥も一緒だよ」 涼真が真咲の頭にポンと手を乗せると、それが合図になって大急ぎで靴を脱ぎ部屋に上がってきた。 「とと〜」 勢いよく脚にしがみつきギュッとされる。 「ありがと。今日からよろしくな、真咲」 「あ〜!」 俺を見上げる顔は笑顔で満ちていた。

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