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第32話
「ただいま〜!真咲〜パパだよ〜!」
涼真は帰ってくるなり愛息子の名を呼んだ。
「ぱぁぱ〜!きゃ〜!」
そして真咲はそれに応えるが如くパタパタと走って玄関まで出迎える。
「郁弥、ありがとう。悪かったな」
「いいんだよ。真咲だってたまには俺のお迎えがいいよな?」
そう真咲に向かって言ったが、当の本人は涼真にまとわりついて離れない。
パパ力恐るべし。
「ぱぁぱ〜、とととねんねしゅる〜」
「郁弥と?真咲と一緒だと郁弥がよく寝られないよ」
「ねゆの〜!」
「さっき約束したからな。いいだろ?」
「いいけど…甘やかさなくていいよ?」
「俺が真咲と居たいだけだからさ」
「今日は三人でねんねするか、真咲」
「きゃ〜!は〜い!」
超ご機嫌な真咲はハイテンションで俺が作ったハンバーグを食べ、涼真と風呂に入り、速攻で眠った。
ん?
俺と寝るの楽しみにしてたんじゃないの?
一人でさっさと布団に入ってる。
「嬉しすぎて普段通りの生活しちゃってるよ」
子供ってホント良く分からないな、そう言って涼真はソファーに座った。
「どう?久しぶりに飲む?」
「いや、俺はいい。郁弥飲めよ」
「そう?じゃ、俺だけ…」
涼真は酒を飲まない。
飲めない訳じゃなく、真咲がいるから。
何かあった時、酔っ払ってたら何も出来ないよって、そう言った事があった。
俺の知らない涼真。
父親の、顔。
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