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第33話

「とと〜!ま〜くんといくの〜!」 涙声で珍しくご機嫌ナナメの真咲。 「真咲!郁弥はお仕事行くの!真咲はパパと保育園!」 一緒に寝なかったのが真咲にバレた。 腰への重みで目が覚めた俺は布団の上に真咲が乗っているのを見て、しまった…と思った。 先に起きるはずだったのに…。 つい涼真と話し込んで早起きした真咲に襲われたのだ。 そこからずーっとくっつかれてこの有様。 「涼真、今日は俺が連れて行くよ」 「甘やかさなくていい!真咲、いい加減にしなさい」 「ぱぁぱ〜うぇ〜ん…」 おー怖。 声を荒立てる涼真、初めて見た。 あの、優しい男の子がこんな風になるのか…。 親になるって凄いんだな。 そして俺は真咲と保育園へ。 門を開くとすぐに保育士の先生が出迎えてくれた。 「先生おはようございます」 「おはようございます」 「はよーごじゃましゅ」 「真咲くん、上手に挨拶出来ましたね」 今日はあの男性保育士さんが朝の当番か。 あいさつを済ませたら教室に入ってでっかいカバンから真咲の引き出しにオムツや着替えを仕舞って準備完了。 「よしっと。それじゃあお願いします」 「いってらっしゃい。お気をつけて」 よく知らない人に見送られる不思議…。 門扉を閉めるまで、振り返ればずっと目が合う。 「送るのが俺で珍しいからかな。さーて、仕事仕事」 そう思えばなんだか納得できるような気がした。

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