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第37話

「……」 声を掛けようとしたのに…予想していた状況と随分違っていたせいで声が出せない。 「……っ…ふっ……ぁ……」 僅かに聞こえる涼真の声。 入口に背を向けているから顔はよく見えないけど、その声は……ヤバい……。 終電まで まだ二時間もあるから俺がいない間に溜まったアレを抜こうとしてるんだ! これは涼真の至極プライベートな行為。 他人、いや親兄弟でも見ていいモンじゃない。 頭では分かっているが、俺は目が離せずにゴクン、と唾を飲み込んだ。 畳んだ掛け布団の上に上半身を預け、脚は大きく開いている。 左手は規則的に動きアレを扱いているんだろうけど…右手は胸?…それからどこ触ってるんだ? …ん〜よく見えないなぁ… 「あ…ぁ…ンッ……」 聞き慣れない音がして…涼真の左腕が顔に……声を殺しているのだろうか。 その腕に黒い紐が見えるけど…それは……レース……? …! 引越しの時に俺が落としたダン箱に入った奴? 咲百合のだと思ってたけど…違うの? 聞きなれない音はそれと一緒に入ってた大人のアレか? どうしよう…? 本当に見てはいけない姿を見てしまった! 涼真は相当集中してるみたいで一向に俺に気が付かない。 ……無かった事に…… 急いで…でも物音を立てないように…玄関へと向かい、外へ出た。

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