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第40話
涼真と同居を始めて四年経った。
あっという間。
もう、四年。
真咲も五歳を過ぎて赤ちゃんからすっかりと子供になった。
オムツを付けて“ とと〜 ”って脚に絡みついていた頃が懐かしい。
もう大体の事が出来るようになった真咲は率先して家事を手伝ってくれる。
涼真には早々に戦力外通告を出しておいて正解だった。
いや、でも出来ることはやってもらってるけど。
真咲は洗濯物も上手に畳めるし、掃除もお手の物。
身体が小さいからコンロを使った調理は無理だが、ホットプレートならホットケーキもお好み焼きも、焼きそばまで作ってくれる。
凄くない?凄いでしょ?
見た目はちょっとアレだけど小さな手で一生懸命作ってくれて…初めて食べた真咲手料理のホットケーキは少ししょっぱい味がした。
ホットケーキミックスを牛乳で溶いて焼くだけなのに。
歪な形のホットケーキがパサついてて胸に詰まらせながら食べたっけ。
涼真はポロポロ泣いちゃって、もう、食べる所の騒ぎじゃなかった。
“ パパはどうして泣いてるの? “って真咲まで泣いちゃったっけな。
真咲からすれば俺はただの他人なのに、俺は勘違いするほど涼真と真咲との生活に入れ込んでいた。
「お、もう帰るのか。デートか?」
同期の中黒が退勤寸前の俺を後ろから追い抜いた。
「効率的に仕事してるからな。それにスーパー寄って帰んだよ」
「は?スーパー?プレミアムフライデーなのに?」
「明日は運動会だから弁当の仕込みしとくんだ」
「はぁ〜…」
嬉々と話す俺とは対照的に中黒はどよんとした顔で俺を見る。
「香束…三十路手前の独身男がまるで主婦じゃねぇかよ。いいのか?それで?ちょっと、来いよ」
あ〜きたきた…中黒の説教が。
長くなる前に逃げよう、と思いつつ俺は中黒の後をついて行った。
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