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第44話
「涼真、布団で寝なよ。体冷える」
「…ん?寝てた?」
居間のソファーに体を預け、閉じていた目が薄ら開いた。
涼真は昼間俺が撮影したビデオの映像を一人で見ていた。
夕飯後、テレビ出力して三人で見たじゃん。
真咲の勇姿を見て、泣いてた涼真。
普段デスクワークしかしない人が運動会であれだけはしゃいだら疲れるよな、うん。
「真咲はぐっすりなんだろ?俺、風呂ってくるから」
「うん…分かった」
涼真の眠そうな声を聞き、風呂から上がったら起こして布団に連れていけばいい、俺はそう思った。
「くぅ~~はぁぁ~~」
声が漏れるほど気持ちいい。
早起きして弁当作って、応援、撮影…さすがに疲れた。
明日は日曜日。
「二人ともいつもより少し遅く起きて来るだろうからゆっくり朝飯用意して、それから…
…おっと…危ねぇ…」
少しぬるくなった浴槽に浸かって、俺は意識を手放していた。
「こんな所で溺れたらシャレになんない」
下だけ履いてさっさと風浴室を出た。
「涼真…は寝てる」
うわぁ、やっぱりか。
眠っている涼真の顔を正面からマジマジと見た。
長い睫毛がふさふさして顔に影を作っている。
少し垂れた目元は目を閉じているせいかそれほど気にならずむしろいつもと違う美しさを感じた。
通った鼻筋に薄い唇。
少し伸びた前髪が目に掛かっていた。
無意識に手を伸ばし、指で髪を撫でる。
…涼真…キレイ…
疲れて眠っているせいか顔色は白く…眠姫を連想した。
「姫を起こすには…」
…出来心だった。
俺は、涼真に口付けた。
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