51 / 322
第51話
「俺達あと数年で三十歳になんだぜ。なのに俺と真咲が郁弥を独占してたらお前結婚どころか彼女だって出来ないじゃないか!」
「…何だ…そんな事かよ…。俺、嫌われたと思って焦った」
俺が涼真に抱いている邪な感情がバレたのかと思った。
「そんな事、なんかじゃないだろ?大切な事だ」
「涼真は気にすんな。俺が一番に望んでやってる事だから」
そう、これは間違いない。
俺の本音。
「そんな事…言ったって、俺達郁弥を犠牲にしてる…」
「違う!犠牲なんかじゃない!」
…どうしよう…言ってしまおうか…
…俺の本当の想いを…
…今まで胸の奥底に押し込んでいた邪な想いを…
…でも…それこそ取り返しのつかない、戻れない関係になるかもしれない…
「居心地が良すぎて、他人の郁弥に甘え過ぎた」
口をへの字にして、何かを堪える涼真。
俺、そんな顔させたくてお前と暮らし始めたんじゃ、ない。
どうせ離れるなら…今までの想いを伝えてもいい?
俺が、どんなに涼真の事が…好きかって…
「…涼真、少し俺に時間を頂戴。俺の話、聞いて…」
潤んだ瞳で俺の目を見た涼真は、見たことも無い辛そうな顔をしていた。
ともだちにシェアしよう!