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第52話

「好き…なんだ…その…涼真の事」 …正面からは涼真の顔が見られなくて、顔はそっぽを向いて積年の想いを口にした。 正面に座る涼真がどんな顔をしているか、俺は知らない。 「…俺の事はいいよ。郁弥が好きなのは女の子だろ?」 俺の言葉の解釈を違える涼真。 よくよく考えようとも信じようともしてくれない。 ぐっと手を握り締め、正面から涼真に告白した。 「…違う…違うんだよ。俺がずっと好きだったのは…涼真、お前なんだよ」 「…何言って…郁弥…?」 ようやく言葉の意味を理解したのか、涼真の目が大きく開いた。 「好き…俺を…?え、…だって…今まで…」 動揺して後ずさった結果、ガタンとイスが大きな音を立てた。 「気持ち悪いだろ?…ずっと…二十年以上も、だぜ?」 多分出会ったあの日から…ずっと涼真が好きだった。 どうせ俺から離れていくならと、涼真に呪いをかける。 好きという言葉と俺を紐付けて、忘れられないように……思い出すように。 「さ、もう言いたい事は無いから…ちょっと出掛けてくる。荷物、纏めとけよ」 残っているアイスはもうとっくに溶けていて、手とテーブルがベトベトする。 まず手を洗わなきゃ。 下を向き、涼真の顔を見ないように、目を合わせないように、俺はイスから立ち上がった。 「待って…」 その手を涼真が掴んだ。 「俺、郁弥の気持ち知らないまま、ずっと生きてきた…」 涼真の目は涙で濡れていた。

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