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第53話

「知らなかったんだ。だって…郁弥は…か…かっこいいから…いつも周りに女の子がたくさんいて…」 今度は涼真が視線を下に泳がせ、ポツポツと言葉を選びながら話す。 「…俺が…俺なんか近寄れる雰囲気じゃなかった…」 「…それで…?でも涼真は咲百合といつも一緒にいて…そうだよ。それこそ俺が入り込む隙なんて…一ミリも無かった」 俺が涼真を想って胸を痛めている時、お前は咲百合と一緒にいて…俺は…二人の姿を見るのが嫌で…だから言い寄ってくる名前も顔も分からないような子達と付き合ったんだ。 もちろんそんな理由で付き合い始めるんだから上手くなんていくわけなくて、すぐダメになった。 俺の心が欲しい子達はすぐに俺から離れ、俺は次から次へと、取っかえ引っ変え女の子達と付き合っていった。 「郁弥…ゴメン…」 思いつめたような悲しそうな顔。 顔色は白く血の気が失せたように見える。 眉間には見たことも無いような皺が出来て、一目で涼真が苦しんでいるのが分かった。 ギュッと結んでいた口が開く。 「咲百合は…俺の事…愛してた訳じゃない…」 …え? 「だって…涼真は咲百合と結婚式して真咲だって生まれて…」 愛していない…? それならなんで一緒になって子供を作ったりしたんだ?

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