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第54話

「俺と…咲百合は…その…郁弥には理解出来ない関係だった…と思う…」 …理解出来ない? 「まずその…郁弥は誤解してて…」 「誤解?」 「咲百合と一緒にいたってトコ」 …は? 誤解しようがないだろ? お互い好きだから…一緒にいたんだろ? 「言い訳するようだけど…あれは…好きだから一緒にいた訳じゃなくて…その…」 「ハッキリ言ってくれよ」 落ち着かない様子の涼真は片手で顔中を触りまくっている。 「あれは…二人で秘密の共有をしてたんだ…」 「秘密…」 血の気が失せていた涼真の顔に赤みが差し、その色がどんどん濃くなる。 「何?その秘密って」 「聞きたい?」 俺は首を縦に振った。 当然だろ? ここまで来て、俺はもう後戻り出来ないのに。 「好きな人の事…」 「え…?」 「二人で…好きな人の事…ずっと話してた」 「お互いの事?」 「違う。俺の好きな人と、咲百合の好きな人」 違うの? 「え?意味分かんないんだけど」 二人は付き合ってた… …だって、夕暮れの図書室で二人微笑んで…。 …何てお似合いのカップルなんだって、羨ましくて仕方なかった。 でもおっとりした涼真には少し気が強い咲百合がお似合いだともその時思ったんだ。 「俺は咲百合の好きな人の話を聞いて、咲百合は俺の好きな人の話を聞いて…だからどっちかって言うと同士みたいな関係…だったのかも」 俺には涼真の言っている事が理解出来なくて、ただ話を聞く事しか出来なかった。

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