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第56話
「咲百合より、俺は涼真の事が知りたい」
ひとしきり涼真は咲百合について語ったが、俺は誰よりも涼真の事だけに興味がある。
「俺は…俺の好きな人は…」
「…うん。教えて」
ようやく涼真が俺の腕を離した。
テーブルの上には白い水溜まりが出来、その表面に涼真の顔が映り込んでいる。
「…その人は…俺にとってとても魅力的で、いつも側にいてくれて…俺にはもったいない位に凄く大切にしてくれた」
「…うん」
「でも…ある日を境にして、突然距離を取られて…それで俺…不安になった。もしかして自分がこんな感情を持っているのを知られてしまったから…だから離れていったのかって。だからそれに気がついた咲百合が俺に声を掛けてきて…後は話した通り」
涼真にそんな風に思われてる奴がいたのか…。
「告白しなかったのか?」
「……」
涼真は黙って首を振る。
「そっか…。でも、告ってたら涼真なら上手くいったかもしれない」
「バカ!!」
突然俺をバカ呼ばわりした涼真は唇を噛み、俺を睨みつけていた。
「俺が…俺が好きなの…誰だと思ってんだよ!このバカ郁弥!」
「…え…?俺の知ってる奴なのか?」
潤んだ目で俺を射抜くように見つめる涼真の腕が、ゆっくりと動き俺の胸にグーパンをキメた…。
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