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第64話

天気のいい休日。 ベランダで洗濯物がひらひらと揺れている。 真咲は大好きな夏羽の所に遊びに行って、今日も涼真と二人きり。 リビングで麦茶を飲みながら涼真とゆっくりと過ごす午後。 大人の話をしようとしてもどうしても子供の話をしてしまう。 「…夏羽は成績優秀で将来は優羽と同じ医者になるって言ってるらしいぜ」 「夏羽くんは聡明だし、向いてるんじゃない?」 「今から将来決めなくてもなぁ」 「目標はあった方がいいよ」 夏羽は他の子供より少し大人びていて、いわゆる学級委員長タイプ。 子供なんだからもっとハメはずしてもいいんじゃないかって思う。 涼真だって俺ほどじゃないにしても子供の頃はヤンチャだったしな。 「ところでさ、明日デパート行かないか?」 「何か用事?」 「いや…真咲のランドセル見に行こうよ」 「…ランドセル?」 「そう、ランドセル」 来年小学生になる真咲に、俺からプレゼントしたい。 「いいよ、悪いって」 「俺が買ってやりたい!」 「でも…」 「…あ、チャイム…」 「あれ?誰だろ?」 「宅配か?」 涼真がドアホンで外の様子を確認し、パタパタと玄関に向かった。 「通販したっけな?覚えてない…」 そんな事をぼや〜っと考えていたら涼真がダンボール箱を抱えて戻ってきた。 だがその表情は暗い。 「涼真、誰から?」 「…大崎先生の…多分母親…」 「…は?」 「…真咲にランドセル送ってきた…」 「…どうして?」 「………っ…」 涼真の眉間に深い皺が刻まれている。 あぁ、これは四年前の涼真と同じ。 酷く辛い事がある顔。 俺はどうしたらいい?何が出来る? 歯を食い縛る涼真にかける言葉が見つからない。 だが俺は焦らない。 涼真から話してくれるのを待つんだ。

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