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第66話
「お前が悩むなら…ズバリ、東藤の事だろ?」
…ドキッ…!
何で分かるんだ?
中黒の含みのあるニヤけた顔が俺の中にある涼真への想いを見透かしているようで、額からじんわりと汗が滲んだ。
「中黒〜、適当な事言ってんじゃねぇよ。何で俺が涼真の事で?はは…」
内心ドキドキしながらも俺はシラを切った。
中黒は悪いやつなんかじゃない。
それは充分に知ってる。
…でも…今は何も言いたくない。
中黒と会話出来ないよう口の中にキャベツの千切りと豚肉をかっ込んだ。
だが中黒の口から出た言葉は俺の動きを止めるのに充分だった。
「東藤って…ちゃんと父親なの…?」
「……?」
「見た目通り…じゃないかもよ?」
「それ…どういう意味?」
「あ!俺もう戻らないと〜(棒読み)じゃな!」
空のトレイを持って、中黒はさっさと俺の前から姿を消した。
…見た目通りじゃない…?
涼真は涼真だし、真咲の父親には間違いない…。
意味わかんねぇ。
「パパ、とと、おやすみなさい」
「おやすみ、真咲」
夜九時、真咲の就寝時間。
どんどんと大きくなる真咲を見送って、俺は涼真と二人、リビングにいた。
送られてきた真咲の学校関係の書類に目を通す涼真。
その姿を見ていると中黒の言葉を思い出した。
『 ちゃんと父親なの? 』
どういう意味だろう。
俺からは涼真は父親にしか見えない。
それ以外に何があるっていうんだ。
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