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第67話

「郁弥、どうかした?」 正面に座る涼真がプリントから目を離して不思議そうに俺を見た。 テーブルに肘を付き、考え事をしていて心ここにあらずな俺。 「いやぁ、真咲も大きくなって来年小学校に上がるのかって思うと…何だか…なぁ…」 「そうだね。…全部郁弥のおかげだと思ってる」 真面目な顔をして俺を見つめる涼真。 「違う!涼真が頑張ってるから…だから、だ」 「そんなに否定しなくても…ありがとう、郁弥」 涼真の顔が緩み、ふふ…と微笑んだ。 …そう、俺は涼真に笑っていて欲しいんだ…。 こんなに頑張って子育てしてる涼真はちゃんと真咲の父親だと思う。 「…そうだ、郁弥。今度デパートに行こうよ」 「いいけど…何見るの?」 「…ランドセルなんだけど…いい…かな…?」 それって…! 「俺が買ってもいいのか?」 「郁弥がまだその気なら」 「もちろんだよ!俺が真咲に買ってやりたい!ありがと、涼真!」 勢いで目の前の涼真の手を両手で覆い握りしめた。 「ちよっと…郁弥。大袈裟だって…」 「だって…俺が買いたかったから…」 握った涼真の手が汗ばんでいる。 そして微妙に俺から視線を外す。 …これは…いいのかな…? 「…ねぇ…ちょっとだけ…俺の部屋に来ない?」 「…ぇ…あ…郁弥の?…う…ぅん…」 少し恥ずかしそうに、でも俺の手を振りほどくことはしないで涼真は頷いた。

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