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第68話

子供のように涼真と手を繋いで廊下を歩き、パタン、とドアを閉じて立ったまま向かい合う。 「郁弥…」 するりと細い腕が首に回されて、近づく涼真の顔。 「…ん…」 唇が重なり、目を閉じた。 部屋にはクチュクチュという水音だけ。 表面を丁寧に舐めて、柔く食む。 密着した身体から互いの熱を感じ、キスだけでは我慢しきれない。 欲しい。 涼真が、欲しい。 もっと深い所にたどり着きたいという欲望がどんどん膨らんで、自分でも手に負えなくなってきた。 好きだ、という気持ちは涼真に受け入れてもらった、と思う。 でも真咲を一番に考えてる涼真に俺のことで負担をかけたくはない。 キスをしたり触れ合ったり…時々は抜きあったりしてもそこから先へは進めないでいた。 …涼真の胎に入りたい。 欲求は具体性を増し、そろそろ想像するだけで終わるのは難しい…。 涼真は俺を欲しがってくてれるだろうか…? 形を変えた雄の身体を涼真にぐっと擦り付けてその反応を見た。 深くキスをしているのに眉間に皺を寄せている…。 「涼真…辛い…?」 もっと触れていたい唇を離し、じっと目を見つめた。 真咲と同じ、やや下がり気味の目尻。 言いかけて開いた唇をキュッと結んで、赤い顔色を幾分濃くして涼真が口を開いた。 「…もっと…いく…や…が…」 「…え…?」 言いながら俺の肩口に顔を埋めて涼真が囁いた。 …欲しい…と。

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